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Episode 90

 ミリベアスはレイフォンのことを危険だと感じていた。


「貴方は本当に人間なの?」


「そうだけど。とりあえずお前は約束を守れよ?」


「それは……わかってるわ」


 剣のことよりも今はレイフォンのことが気になって仕方がないミリベアス。


「わたくしは魔国ではお父様以外に負けたことがなかったのよ? そんなわたくしが一瞬で……まさか! 貴方が勇者なの?」


「そんなわけないだろ?」


「なら! 貴方は何者なのよ!」


「さっきも言ったけど、俺はアシュリーの幼馴染みのただの一般人だ」


「貴方みたいな人間が一般人なのなら魔族はとっくに滅んでるわよ!」


「そう言われてもな……」


 面倒そうに頭をかくレイフォン。


「貴方はお父様を、魔王を倒そうとは思わないの? もしかしたら貴方なら……」


 魔王に勝てるとまでは言わないが、レイフォンなら魔王といい勝負ができるのではないかと、ミリベアスは思った。


「それは俺の役目じゃない。勇者達の役目だろ?」


「なら、貴方は魔族とは敵対しないということ?」


「そうじゃねぇよ。魔族だろうと人間だろうと俺の大切な人を、人達を傷つけるのなら俺は容赦はしない。ただ、それだけだ」


「そう、なのね……ならもしも、わたくしが貴方の大切な人……ではないけど存在になったら貴方はどうするの?」


「仮にだ。そうなったとしたら俺はお前を守るだろうな」


「えっ? わたくしは魔族よ?」


「大切に人も魔族も関係ないんだよ」


 思わずレイフォンの言葉にドキッとしてしまったミリベアス。


「何を顔を赤くさせてるんだよ? お前が聞いてきたから答えただけで、それに仮にの話だろうが?」


「わ、わかってるわ……そんなこと……」


「じゃあ、俺はもう帰るからな」


「……貴方はわたくしを置いていく気なの?」


 ひとりで街に戻ろうとするレイフォンに少し甘い声で話かけたミリベアス。


「図々しいなお前は……ほら、肩に掴まれ」


 すると


 ミリベアスはレイフォンの腕に胸を当ててくっついてきたのである。


「おまっ! お前な……俺は肩に掴まれって言ったよな?」


「あら? そうだったかしら? 別にどこでもいいでしょ?」


 惚けた表情を見せるミリベアス。


「まっ、いい……それじゃあ、っと」



 再び宿屋の屋根の上に戻ってきたレイフォンとミリベアス。


「ほら、街に戻ってきたから離せよ?」


「どうして?」


 上目遣いでレイフォンを見るミリベアス。


「どうしてって、もうこの件は終わっただろ?」


「終わってないわよ? あの娘の剣は確かに諦めたわ。だけど、わたくしは貴方に興味を持ってしまったの。だから、しばらくわたくしは貴方の、いえ、レイフォンの側にいさせて貰うわ」


「はっ?」


(何を言ってるんだこいつ?)


「そう言うわけで今日はひとまずは帰るけど、また明日、もう今日ね……レイフォンにわたくしは会いに行くわ。それじゃあ、またねレイフォン♪」


 そう言ってミリベアスは、笑顔でレイフォンの腕から離れて手を振りながら姿を消したのであった。


 レイフォンは思った。


(つか、あいつも転移魔法使えるじゃねぇかよ!)




 ーーーー



 魔王城。



「お帰りなさいませミリベアス様」


「ただいまレギアス」


「人間の国はどうでございましたか?」


「まぁまぁね……あっ、そうだったわ。レギアス? わたくし、しばらくはここには帰ってこないわよ」


「帰ってこない、ですか?」


「そうよ。面白いの(レイフォン)を見つけちゃったのよね」


「面白いの、ですか?」


 まったく理解できないとの様子のレギアス。


「そう言うことだからお父様にはレギアスから伝えといてくれる? よろしくお願いねレギアス」


 ミリベアスは自分の用件だけを伝えると、レギアスが言葉を返す前に姿を消してしまったのである。


「ミリベアス様……そういうことと言われましても…………はぁー……自由すぎる姫様だ……」


 ミリベアスが姿を消したあとレギアスは、苦労が伺え見える表情で大きなため息をついたのであった。




お読み頂きありがとうございました。

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