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Episode 86

「この串焼きを一本頂けないかしら?」


「はいよ! お嬢ちゃんは美人だからひと切れおまけしてやるよ」


「ありがとうおじさん」


「三百SLだ」


「これで足りる?」


 少女が財布取り出したのは白金貨(一万SL)。


「!? お嬢ちゃん……それは流石にお釣りが出せない、出せませんです」


 屋台の串焼き屋の男性は少女がどこかの貴族令嬢かと思ったのか、慌てて丁寧な口調に変わった。


「そうなの? なら、これでいい?」


 次に少女が財布から取り出したのは銀貨(千SL)。


「あっはい。ではお釣りの白胴貨七枚(七百SL)のお返しです」


「ありがとう」


 お釣りと串焼きを受け取った少女はお礼を述べると背を向け屋台から歩き離れていった。


「し、白金貨なんてはじめて見たぜ……」


 串焼き屋の男性は少女が見えなくなるとぽつりと呟いたのであった。


 ーー


 少女は串焼きを食べながら路地裏の方へと入っていっていた。


「わたくしに何か用でもあるの?」


 少女が言葉を発すると


「気づかれちまったか」


「まっいいじゃねえか?」


「嬢ちゃん? その白金貨の入った財布を俺らに寄越しな?」


 串焼き屋のところから少女のうしろをつけていたガラの悪そうな男性3人。


「おっ、間近で見るとこの嬢ちゃん美人じゃねえか」


「まじか」


「金に美人な嬢ちゃんって今日の俺らラッキーなんじゃないか」


 ニヤニヤとした笑顔を浮かべる三人。


「……そうね。貴方達はラッキーよ……だってーー」


 少女が言葉を発した瞬間


 スパッ スパッ スパッ


 三人の首が飛んだのである。


「ーーわたしくに殺されるのですから」


 微笑む少女。


「あら? もう死んでいるのね? お父様の言っていた通り人間はもろいわね」


 少女の名前はミリベアス。


 魔王の実の娘である。


 しかし、どう見ても姿は人間の美しい少女そのものであった。


 魔族特有の角も見当たらない。


「まっ、いいわ。せっかくだし観光を続けましょうっと、ふふふーん♪」


 ミリベアスは何ごともなかったように、楽しそうにして鼻うたを歌いながら路地裏を後にしたのであった。


 ーー


 ミリベアスは人間の街観光を楽しんでいた。


「魔国にはない美味しい食べ物や可愛いものが沢山あるわね」


 その時


「ブラックベアが街に現れたぞ! 逃げろ!」


「ん?」


 大声を聞いたミリベアスはアイスを片手に首を傾げた。


「誰か! 娘を!」


 ブラックベアが走り迫る道の線上には幼い女の子の姿があった。


「同じ女性と幼い子供が死ぬところを見るのはあまり好きじゃないのよね……」


 ミリベアスはそう言うと瞬時に女の子の前へと移動した。


「あなたは!?」


 すると横には別の少女がブラックベアを待ち構えるように立ちミリベアスに話しかけてきた。


「今はあのブラックベアをなんとかするんでしょ?」


「そ、そうね……」


 少女はミリベアスの言葉に頷いた。


 そして


 それは一瞬だった。


 ミリベアスがブラックベアの首をおそらく魔法で切り落として、少女が体を剣で横に切断したのである。


「もう大丈夫よ。怖かったわね、ほら、お母さんのところにいきなさい」


「う、うん……ありがとうお姉ちゃんたち」


 また、別の少女が現れて女の子を落ち着かせるように微笑みかけていた。


 女の子が礼を述べて母親の元にたどり着いたあと


「お見事でしたおふたりとも」


 最初に話しかけたのは女の子に微笑みかけていた少女マリベル。


「わたくしが飛び出す必要はなかったみたいね」


 次に話すのはミリベアス。


「そんなことないです」


 最後に話したのはアシュリーであった。


 今このイースラ王国のとある街で


 ウェスタリア王国勇者パーティーメンバーのアシュリー。


 イルガリア王国第一王女マリベル。


 そして


 魔王の娘ミリベアスの三人の少女が出会ったのである。




 その頃


 レイフォンはというと


「おじさん、この串焼きを二本、いや三本ください」


 のんきに串焼きを購入していたのであった。




お読み頂きありがとうございました。

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