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Episode 85

「カシとヤンは左右から攻撃をお願い!」


『うむ』


『わかったぜアシュリー』


 アシュリーの指示に二体の炎のドラゴン(炎竜姉妹)は頷き、口から炎をはいた。


「残念だが俺には効かない」


 だが、攻撃を受けるレイフォンは左右の手を広げて炎を簡単に受け止めた。


「何が残念よ! 体ががら空きじゃない! はぁああああ!」


 炎の魔法剣エンファートを振り上げレイフォンに接近するアシュリー。


「死ねー!」


 アシュリーは無防備になっているレイフォンの体を目掛けて剣を降り下げた。


 しかし


「俺に死んで欲しいのか欲しくないのかどっちだよっ、と」


「くっ!?」


 剣は何か見えない壁に当り弾かれた。


 うしろに下がるアシュリー。


「何よそれ! レイは両手が塞がってるはずでしょ?」


「別に手が塞がってようと魔法は発動できるんだよ、ほら、お前らももういいぞ?」


『今日も流石ですレイフォン様』


『今日もだめだったか、残念だぜ!』


 レイフォンに言われて二体は炎をはくのをとめた。


「はっ? それって反則じゃない? 無詠唱だわ、どんな状態でも魔法が使えるだわ……反則……反則よそんなの!」


 抗議するアシュリー。


「反則って言われてもな……できるんだから仕方ないだろ?」


「何? それって嫌みなの? カシとヤン、それに魔法剣をもった私と三人でもかすらせることができないなんて……やっぱりレイが魔王を倒せばいいじゃない!」


 アシュリーの言葉にレイフォンは首を横に振った。


「それは俺の役目じゃないって何度も言ってるだろ? だからこうして俺がアシュの訓練に付き合ってやってるんだろうに?」


「そうだけど……」


 納得は完全にはしきっていないアシュリー。


「それに俺は目立つのが苦手なんだよ? 本当は旅なんてしないでのんびりとテスターの街で過ごしていたかったんだ。まっ、それは今さらだけどな……とにかく一緒にいる間は訓練には付き合ってやるから、そのあとはさっさと魔王でも倒してこいよ。その時は俺はテスターの街で帰りを待っててやるからさ」


「……うん。ならこれからもしっかりと付き合ってもらうわよ? わかったわねレイ?」


「へいへい」


 アシュリーと旅を続けて約一ヵ月。


 レイフォンは自分のことを大体はアシュリーに話していたのである。


「そろそろ西の地域に入るわね」


「そうだな。結局あれ以来は南ではとくに何もなかったな」


「そうね……あれ以来魔族の姿を見ていないし……噂は本当のようね」


「噂?」


「魔族達が突然と人間の住む地域から姿を消したって噂よ? 昨日も話したでしょ?」


「そう……だっけ?」


 首を傾げるレイフォンにアシュリーは呆れた表情を見せていた。


「レイはおかしいと思わないの?」


「飽きたんじゃねえの?」


「そんなわけないでしょバカ! カシとヤンはどう思う?」


 炎竜姉妹はいつのまにか人間体へと変わっていた。


「オレはよくわかんないかな?」


「魔族達は何かを企んでるのであろうな、正確には魔王が、だがな」


「やっぱりそうよね……」


 手を顎にあてて考える仕草を見せるアシュリー。


「俺、思うんだ」


「何を?」


「腹が減ったからさっさと次の街に行こうぜ?」


「……レイは世界の状況を見て知るために旅をはじめたのよね?」


「そうだ。確かに世界には俺の知らないおいしい食べ物が沢山あったな」


 レイフォンの言葉にアシュリーは呆れ顔で大きなため息をついた。


「疲れたのかアシュ?」


「違うわよ! どうしてこんな無駄な男が世界最強だなんてって私は呆れていたのよ!」


「最強ですけどなにか? ほら、それより早く行こうぜ」


「……もう、いいわ……カシにヤンお疲れ様。今日も付き合ってくれてありがとうね」


「うむ」


「かまわねぇぜ!」


 そして、炎竜姉妹は姿を消した。


「なあ? 俺には感謝の言葉はないのか?」


「レイは黙りなさい。ほら、街に向かうんでしょ? 行くわよ」


「……へいへい」


 相変わらずの扱いのレイフォンは、先に歩き出したアシュリーを追うようにゆっくりと歩きはじめたのであった。




お読み頂きありがとうございました。

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