Episode 72
「貴様も手には何も持っていないようだが、魔法使いか? 俺が詠唱を唱える時間を与えるとおもっているのか?」
アシュリーは先ほどミカレが魔法詠唱を唱え終わる前にバルトスに首を掴まれた場面を見ている。
「私は別に魔法だけじゃないのよ? レイ! 武器ぐらい貸しなさい!」
レイフォンが戦う気がないのはわかっているアシュリー。
「へいへい、ほら、よ!」
レイフォンはそれぐらいならと異空間から一本の剣を取りだし、アシュリーに放り投げた。
剣をキャッチして受け取ったアシュリー。
「ほう……剣を使うのか?」
「そうよ!」
鞘から剣を抜き、構えながらアシュリーはバルトスに答えた。
(何!? この剣? 凄く軽いし、手に馴染むわ)
「アシュ! その剣に魔力を流し込んでみろ!」
(魔力を?)
レイフォンに言われた通りにアシュリーは剣に魔力を流し込んだ。
すると
剣の炎が刀身から湧き出したのである。
「何よ……これ? 凄い…………これならイケるわ!」
「ほう……面白い」
「行くわよ魔族!」
「かかってこい人間!」
アシュリーVSバルトスの戦いがはじまる。
ーー
つくづく自分はアシュリーには甘いなと思うレイフォン。
レイフォンがアシュリーに渡した剣は
『炎の魔法剣エンファート』
伝説級の剣である。
『レイフォン様? あれでは我らがアシュリーの呼び出しに応じなかった意味がないのでは?』
『そうだぜ、です。レイフォン様?』
実は炎竜姉妹は地上に現れていた。
姿は消しているが。
「……あれだ……あれはアシュ自信が戦うんだからギリギリセーフだろ?」
一瞬、確かにと思ってしまったレイフォン。
『そんなものですか?』
『そんなものなのか? です』
「つか、ヤンは普通に話せ?」
『わかったぜ! レイフォン様!』
とにもかくにも、レイフォンはアシュリーに甘い。
炎竜姉妹に頼りがちになっているアシュリーに、少し試練を与えるつもりで炎竜姉妹に呼び出しに応じないように指示をだしたはずなのだが……
伝説級の剣を渡しては、なんというか試練になるのだろうか……。
「とにかくお前らもアシュリーの戦いを見てろよ! で、これからはあまりアシュリーを甘やかすな。アシュリーのためにならないからな」
『それは……』
『う~ん……』
炎竜姉妹のカシとヤンはレイフォンに言われてもと心の中で思ったのである。
「な、何だよ?」
それは自分でもわかっていたレイフォン。
『『何でもありません……』』
姿を消しているために表情は見えないが、おそらく炎竜姉妹の表情は苦笑いであろう。
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