Episode 71
「ミカレさん! ……双炎竜! カシ! ヤン!」
首を絞められるミカレを見たアシュリーは助けるために炎竜姉妹を呼んだ。
だが
現れない。
「どうして? カシ! ヤン! お願い出てきて!」
現れる気配はない。
「どうして……」
すると
「アシュはあいつらに頼りすぎだ。それと今のお前じゃ呼び出せない」
いつのまにか、真横に表れたレイフォンがアシュリーに答えた。
「な、なんでよ!」
「……あいつらは別に便利な使い魔じゃないんだよアシュ。もしかして、お前は何も対価がいらずにあいつらを呼び出せるとでも思ってないか?」
「えっ?」
図星だった。
「それより、あれはいいのか?」
レイフォンが指さす先にはいまだにバルトスに首を絞め続けられ苦しそうにするミカレの姿。
「ミカレさん!」
「ほら、アシュは助けたいんだろ? どうするんだ?」
自分は助けるつもりはない、そんな態度のレイフォン。
「くっ……」
(どうすればいいの……)
アシュリーは初めから炎竜姉妹を呼ぶつもりでいた。
自分だけの力じゃバルトスには敵わないとわかっていたのだ。
(どうするアシュ?)
炎竜姉妹を呼び出すのに対価などはない。
通常の魔法同様に魔力は必要だが、今のアシュリーには呼び出せるだけの魔力はある。
なら、何故呼び出せないのか?
それは、レイフォンが炎竜姉妹に指示をしていたからである。
アシュリーの呼び出しに応じるなと。
ーー
「ほらほら、どうした勇者? 反撃してこないのか?」
「ぐっ……はな……ぜ……」
楽しそうな表情のバルトスと苦しそうな表情のミカレ。
その時
火玉(魔法)がバルトスの顔に目掛けて飛んできた。
だが、それを簡単に手でかき消すバルトス。
「そういえば、まだ人間がいたな」
バルトスは言葉と同時にミカレを放り投げた。
「ガハッ」
「ミカレさん大丈夫ですか?」
火玉を放ったアシュリーはミカレに駆け寄った。
「また、人間の女か……つまらん」
興味がなさそうにアシュリーを見るバルトス。
「アシュリー……さん……げほっ……逃げてください……」
ミカレの首にはくっきりとバルトスの手形が残っていた。
絞められ続けたことが影響しているのかミカレはまともに体が動かせなくなっていた。
「それは出来ません! 私が……私がなんとかします!」
「アシュ……リー……さん?」
ミカレを地面にゆっくり寝かせ立ち上がるアシュリー。
そして
「貴方は私が倒します!」
真剣な表情でバルトスに宣言したアシュリー。
「ほうー? 俺をか? 笑わせるなよ? 勇者でその様だぞ?」
ミカレを見るバルトス。
「……それでも私は貴方を倒します」
正直、勝てる自信はないアシュリー。
だけど自分が戦うしかない。
「まっいいだろ……少しは楽しませろよ? じゃないと……殺すぞ?」
ニヤリと笑うバルトスに対して戦闘姿勢になり構えるアシュリーであった。
(やるしかないわ)
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