Episode 70
「凄い……それに連携もしっかりしているわ……」
「だな」
離れている場所から戦いを見ているレイフォンとアシュリーの2人。
「レイはあの魔族に三人は勝てると思う?」
「どうだろうな? 俺はどちらの力も知らないしな」
「そうね……もしもの時は私も参戦するわよ」
「好きにしろ」
レイフォンは今のところは参戦する気はない様だ。
ーー
バルトスを囲んだ南の勇者パーティー三人は攻撃をはじめていた。
ミカレは魔法でシンメとトリーは弓での攻撃。
攻撃を受けるバルトスは動く気配がない。
集中攻撃を続けた三人は一度、攻撃の手を緩めた。
バルトスの姿は砂煙により確認することが出来ない。
「どう? 倒した?」
「まだ、わからないわ」
「けど、ダメージは与えているはずよ」
ミカレの言葉にシンメとトリーが答える。
しばらくして
砂煙が消えて姿を現したバルトスは
「これで、終わりか?」
と楽しそうな口調で言葉を発した。
体は無傷であった。
「将軍って言うぐらいだから、そう簡単に倒せたとは思わかったわ……だけど……」
「無傷とはね……」
「どうするミカレ?」
「そうね……」
トリーに聞かれて少し考える仕草を見せたミカレ。
その時
「キャッ!」
「シンメ! キャッ!」
シンメとトリーはいきなり吹き飛ばされた。
そして、建物に叩きつけられた2人。
「えっ何!?」
何が起こったのかわからないミカレ。
ふたりを見たあと、正面を向くと、目の前にバルトスの姿があった。
「なっ!?」
「次は俺のターンだろ? 勇者?」
バルトスは笑っていた。
ーー
「シンメさん! トリーさん!」
戦いを見ていたアシュリーはすぐに2人の元に駆けつけようとした。
「ちょっと待てアシュ……別にふたりは死んだわけじゃないだろ?」
「死んでからじゃ遅いでしょ! 私はいくわ! 離してレイ!」
そう言ってアシュリーはレイフォンが掴んだ手を叩いてほどき駆け出していった。
「まったく……」
ーー
「アシュリー……さん?」
建物に叩きつけられて意識を失っているように見える2人の元に駆けつけるアシュリーのことが見えたミカレは呟いた。
「よそ見をしている余裕があるのか? 勇者?」
瞬時に後ろに下がり距離をとったミカレ。
「シンメとトリーを吹き飛ばしたのはお前よね? 何をしたのよ?」
「ただの攻撃だ」
詳しくは説明するつもりがない様子のバルトス。
ミカレがチラッとアシュリーの方を確認するとアシュリーが腕で丸と文字を表現していた。
(良かった……)
それを見たミカレは心の中でホッとした。
「また、よそ見か?」
「うるさい!」
魔法詠唱を唱えはじめるミカレ。
だが
「ぐっ!」
ミカレは詠唱途中でバルトスに首を掴まれた。
「ほら、早く魔法を使ってみろ勇者?」
(声が……出せないわ……)
「詠唱を唱えないと魔法が使えないとは、つくづく人間は使えないものだな」
苦しそうにするミカレを見てバルトスは笑っていたのだった。
「は……な…………せ……」
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