Episode 69
「滅ぼした人間の街がどうなってるかと思って見に来たら、まだ生きてる人間がいるじゃねえか?」
「自分らが去った後に来た人間ですよバルトス様」
「まっいい。人間は見かけたら殺さないとな」
「ですね。人間は数だけは多いですから」
「人間はひとり居たら百人は居ると思えっていうからな」
「はい。殺っても殺ってもきりがありませんです」
第六魔王軍将軍バルトスとその部下の魔族。
「おっ、あそこにも人間が居るじゃねぇか」
バルトスはレイフォン達五人に気づいた。
「とりあえず……殺すか」
「はいバルトス様」
ーー
「魔族!?」
声に出したのはアシュリー。
「シンメ! トリー!」
「「わかってるわ!」」
すぐに戦闘態勢にはいる南の勇者パーティー三人。
「お前がこの街を襲ったの!」
「正確には俺の部下達だがな。それがどうした?」
「部下? それがどうした……ですって……」
「俺は魔王様より人間の住む南の地方を任せられている第6魔王軍将軍バルトス様だ。俺が人間ごときに名を名乗ったんだ。光栄に思えよ」
「そうだぞ人間!」
ミカレが怒りで肩を震わせてるのに対してバルトス達は楽しそうな様子。
「私もーー」
戦います、とアシュリーが言葉に出そうとしたが、それをレイフォンがとめた。
「あいつらに任せとけ」
「でも……」
「アシュリーさん、大丈夫よ」
「シンメの言う通り私達だけで大丈夫よ」
「ほらな? だから俺達は下がるぞ」
「……うん」
シンメとトリーにも言われてアシュリーは渋々といった様子で頷いたのだった。
ーー
対当する南の勇者パーティー三人とバルトスとその部下の2体。
「……お前が……他の街や村も襲うように指示を出したのね?」
「だからどうした? ところで俺が名を名乗ってやったんだ。貴様も名乗るのが礼儀じゃないのか?」
「私は……サウザトリス王国の勇者ミカレ・バレンタインよ! 魔族!」
「ほう……勇者か、それは面白い」
鋭い目で視線をバルトスに向けるミカレは、怒りの感情を込めてバルトスに名前を名乗った。
バルトスは勇者と聞いて目を細めうっすらと笑っていた。
「勇者は俺が殺る。お前は残りの人間を殺せ」
「はい! バルトーー」
部下の魔族がバルトスに返事を言葉にしている時だった。
「「残りは貴方よ!」」
弓を構えたシンメとトリーの姿。
手元には矢は見えない。
バルトスはゆっくりと部下を確認した。
そこには
頭と心臓に矢が突き刺さり立ったまま死んでいる部下の姿。
「ほう……」
感心するかの様な反応を見せるバルトス。
部下の死に対しては気にしていない様子。
「……面白い……面白いじゃないか人間……ふははは!」
そして
突然笑い出したバルトス。
「次はお前よ! すぐに部下の待つ地獄に送ってあげるわ!」
「それは楽しみだ。さぁかかってこい! 勇者とその仲間の人間よ!」
実に楽しそうな表情を見せるバルトスの体からは黒い魔力が溢れ漏れていた。
「シンメ! トリー! 接近戦は危険よ!」
「「ええ!」」
三人はバルトスから少し距離をとりトライアングルの形でバルトスを囲んだのだった。
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