Episode 67
サウザトリス王国勇者ミカレは勇者パーティーメンバーのシンメとトリー双子の姉妹と先日、魔族によって滅ぼされたウェスタリア王国との国境近くの街へと訪れていた。
「生き残った人は?」
ミカレの質問にシンメが首を横に振って答える。
「残念ながらひとりもいないわ……」
「街の人達の遺体は兵達が埋葬したみたいね」
トリーが補足して答えた。
ミカレの表情は険しい。
「もっと早くに私達が来ていれば……」
この世界での連絡手段は人を使って直接相手に知らせたり手紙などが主である。
「そうね……魔族には警備隊や一般兵じゃ敵わないわ」
「騎士でなんとかってとこね……」
「なら、なぜ国は各街や村に騎士を配置しないのよ! そうすれば……少しは状況が、助かった命も、私達に連絡がきたかも知れないじゃない?」
「そこは難しいとこなのよミカレ」
ミカレの主張にトリーが答える。
「難しい?」
「騎士をひとりやふたり配置したところでおそらくは何もかわらない。最低十人ほどは配置しないと時間は稼げない。仮にそうしたとしたら今度は王都が手薄になってしまうわ」
「魔王が復活したばかりの時は楽勝ムードまであったはずなのにね……現実は真逆だったわね……」
シンメの言う通り、魔王復活の知らせが入った時は同時に3大国に勇者が現れたこと、魔族のことを魔物程度にしか思っていなかった人間達は余裕を感じていたのだ。
だがしかし
実際は魔族に対抗できるのは勇者達と国の精鋭騎士や高ランク冒険者ぐらいであった。
「なら三大国がもっと協力しあって連携すれば……」
「それこそ難しい話よ。今は争いはなく表向きは平和条約や友好条約を結んでいるけど互いをライバルと思ってる国同士よ?」
「そんなのーー」
「関係ないわ。だけど、そう簡単に協力して魔族を倒して魔王討伐しましょうとはならないのよ。プライドの高い大国同士じゃね」
トリーの説明にミカレは唇をかみしめた。
「プライドじゃ魔族は倒せないのにね……」
呟くシンメだった。
ーー
三人が街の様子を見て歩いてまわってる時だった。
大きな屋敷から五人の男性が大きな布袋を背負って出てきた。
「生き残った人?」
「違うわミカレ……あれはどう見ても火事場泥棒よ」
魔族は金品などにはあまり興味がない。
魔族に滅ぼされた各地の街や村ではこのような行為が度々と発生していた。
「何をしてるの! お前たち!」
トリーの話を聞いたミカレは男性達に大声で声をかけた。
「はっ? 俺達はただ、自分達の荷物を取りに来ただけだ」
明らかな嘘。
「ふざけるな!」
叫んだあとミカレは魔法詠唱を唱えた。
すると
男性達の真下の地面に穴があき、男性達は落下していった。
穴に落ちた男性達を冷たい目で見下げるミカレ。
「兵が来るまでそこにいなさい」
男性達はなにやら文句を行って騒いでいるがミカレは無視して穴から離れていった。
「……なんななのよまったく!」
「まあまあ、落ち着いてミカレ」
色々なことが重なり苛立つミカレを宥めるシンメ。
その時
「うわー、だいぶ酷く襲われたみたいだな」
「そうね……」
男女の声が聞こえてきた。
また、火事場泥棒だと思い込んだミカレは確認することなく詠唱を唱えはじめた。
「ちょっと!?」
「ミカレ!?」
シンメとトリーがミカレをとめようとしたが遅かった。
「天誅よ!」
すでにミカレの放った大きな水球が男女に向かっていたのだった。
お読み頂きありがとうございました。




