Episode 64
開始直後に決着がついてしまった決闘。
驚きを隠せないレオン、マット、ミミーの三人に対して
「お、俺の女って……な、何よ! レイ!」
「あっ悪い。ついな」
「べ、別に謝らなくても良いわよ……嫌とかじゃないんだから……」
「なら、よかったけど?」
「……うん」
甘い空気を漂わせるレイフォンとアシュリーの2人。
アシュリーにとっては決闘の勝敗の結果よりもレイフォンの言った言葉の方が気になった様で……
「え~、勝者は少年だアシュリー。これでレオンもアシュリーの旅には文句は言わないだろう」
「も、文句ではなかったんだけど……」
アシュリーに話しかけるマットと色々とダメージ(精神的)を受けているレオン。
「えっ? 決闘? レイの勝ち? そういえば……」
決闘のこと自体を忘れていたアシュリー。
「ア、アシュりん……」
苦笑いのミミー。
「それにしても少年はーー」
強いんだな、と言おうとしたマット。
だが
「俺のことは聞かない、口外無用ってお願いしましたよね?」
「ああ……すまない」
レイフォンに言い終わる前に言葉を返されたマット。
しかし、マットは気になって仕方なかった。
それはマットだけではなくレオンもミミーもなのだが、レイフォンと決闘前に約束をしてしまった限り聞きたくても聞けない状態だった。
「なら、俺達は帰ります」
「で、では勇者様、マット、ミミー失礼します」
レイフォンと恥ずかしいところを見られたと少し動揺するアシュリーは三人に声をかけて、城の練習場を後にした。
三人はただ頷くような返事しか返せなかった。
ーーーー
レイフォンとアシュリーは城を出ると馬車には乗らずに歩いていた。
レイフォンが馬車に乗ることを嫌がったからである。
アシュリーは馬車に乗って帰るようにレイフォン言ったのだが、それを拒否したアシュリーは今は王都の街がアシュリーフィーバーということもあり、バレないようにフードを深くかぶりレイフォンの隣をなんだか嬉しそうにして歩いていた。
「こうしてふたりでゆっくり歩くのは久しぶりだな?」
「うん……ねぇレイ? 私ね……フードを深く被ってて前がよく見えないの……だからね……その手を……」
「ほら、これでいいか?」
「うん……ありがとう」
レイフォンはアシュリーの左手を握り手を繋いだ。
「レイの手って思ったより大きいのね……」
「それはそうだろ? 身長だって違うんだからな」
アシュリーの頭は丁度レイフォンの肩の辺りの高さにある。
「それなのにテスターの街の人は俺とアシュを姉弟みたいって言ってたしな」
「ふふふ、それは街の人達がレイが私よりも小さかった時から知ってるからでしょ?」
昔を思い出しのか楽しそうに笑うアシュリー。
「だな」
「けど、今は……今の私達はどう見えてるのかしらね……」
「俺が兄でアシュが妹か?」
「もうー!」
頬を膨らませて口を尖らせるアシュリー。
「冗談だ。恋人に見えるんじゃないか?」
笑って答えるレイフォン。
「恋人に……か」
それはアシュリーのとっては嬉しい。
だけど、それは見えるであって恋人ではないとも聞こえ、複雑な気持ちもあった。
実際にふたりはまだ恋人同士になったわけではないのだから。
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