Episode 61
「ーーと言うわけだからレイ、絶対に勝ちなさいよね」
アシュリーは屋敷に帰ってきてからレイフォンに勇者レオンとの決闘になった経緯を説明した。
「レイフォンVS勇者だね」
神様の記憶喪失は一晩したら元に戻っていた。
ちなみに子犬の姿である。
「勇者の条件も無茶苦茶だけどアシュもたいがい無茶苦茶だろ? 普通、そんな条件だされて了承するか?」
「しょうがないじゃない。どうしてレイとの決闘が条件なのかわからないけどレイは強いんでしょ?」
「俺はあんまり人前で力は使いたくないんだよ」
「私のためって言っても?」
可愛らしく首を傾げてレイフォンを見つめるアシュリー。
「アシュは俺のこと何も出来ないやつって言ってなかったか?」
「それはレイが本当の力を隠してたからでしょ? カシとヤンに聞いたわよ。レイは神様に力を貰う前から強かったって?」
「そうだった……あいつらに口止めするの忘れてた……」
「ねえレイ?」
「なんだよ?」
改まってレイフォンの名前を呼ぶアシュリー。
「私にはもう、隠し事や秘密はしないで……お願い」
「……わかった。けど俺だって言い忘れることはあるんだからな?」
「うん」
アシュリーの表情は嬉しそうにしていた。
神様はいつの間にか居なくなっている。
それに気づいたアシュリー。
「その……この前レイフォンが言ってた……その……私のことが大切な存在って……あれは?」
「本当だ」
「そっか……なら……私のために勇者様と決闘して勝ってくれるわよねレイ?」
もじもじして恥ずかしそうにしてたかと思えば、頬を赤く染めてニコっと微笑み勇者レオンとの決闘のことを聞いてくるアシュリー。
「……なんかそれズルくないかアシュ?」
「だって、レイが勇者様と戦って勝ってくれないとレイと一緒に旅が出来ないし……一緒にいられないじゃない……」
今のアシュリーはさっきまでとは違いなんというか控えめな女の子の様だった。
そんなアシュリーに不覚にも可愛いと思ってしまったレイフォン。
「……わかったよ……勇者に俺が勝てば良いんだろ……」
顔をそらして答えるレイフォン。
「ありがとうレイ……だから私はレイのことが好きなのよ」
「へっ?」
アシュリーのストレートな言葉を聞き変な声を出してし目を点にしたレイフォン。
「だから……私はレイのことが好きなの……」
これは明らかにおかしいと感じたレイフォン。
そして、レイフォンはアシュリーが飲んでいるグラスの飲み物を見た。
「なあ? アシュは今、何を飲んでるんだ?」
「葡萄ジュースよ? レイも飲む?」
「ああ、少し飲ませてくれ」
そう言ってアシュリーが飲んでいるグラスを取り一口飲んだ。
「!? これ酒じゃねーか!」
「そうなの? けど美味しいわよ?」
アシュリーの目はトローンとしてきている。
「これ、自分で注いだのか?」
「神様が美味しい葡萄ジュースだって注いでくれたわ」
(あのバカ神様……)
「それより……間接キスしちゃったわね……へへっ」
可愛らしく笑うアシュリー。
これはこれでありかもと思ってしまったレイフォン。
だが
「除去!」
レイフォンは魔法でアシュリーの体の中の酒成分を除去した。
「あれ? 私……今さっきレイに……」
酔いから覚めたアシュリーは顔を赤くさせて頭を抱えていた。
記憶はあるのだろう。
「その……なんだ……とりあえず落ち着けよアシュ」
「だって私はレイに……」
「俺に好きって言ったことか?」
「……」
「俺もアシュのことが好きだ。昔からな」
「えっ?」
「アシュは酔った勢いで言ったみたいだけどな?」
「そうかもだけど……違うの……私も本当にレイのことが好きなの……あっ!」
つい言ってしまったと、恥ずかしそうに再び頭を抱えるアシュリーの姿。
レイフォンはそんなアシュリーを見ておかしそうに笑っていたのだった。
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