Episode 6
テスターの街ではある噂が広まっていた。
「おい、北の地域の魔族の国で魔王が復活したらしいぞ」
「ああ、らしいな。それで何でも神様のお導きがあったらしいな」
「しかも三大国同時にだろう?」
この世界には西の地域に位置するウェスタリア王国、東の地域に位置するイースラ王国、南の地域に位置するサウザトリス王国という大国と呼ばれる三つの王国が存在している。
もちろん他にも国は存在しているが、三大国の力や影響力は強い。
北の地域に位置する場所には魔族の国『魔国』が存在している。
魔族は危険な存在な為に、人間は世界条約に基づき北の地域には立ち入ってはいけないとされている。
ここ100年間は魔族と人間との争い、戦争などは起こっていない。
三大国の力はほぼ互角であり、昔は戦争などもしていたが、現在は平和条約が結ばれており戦争などは起こっていない。
レイフォンが生まれ育った国は、西の大国と呼ばれているウェスタリア王国にあるアシュリーの父 アスラ・テンペリス伯爵が統治する地方にあるテスターの街。
「三大国にそれぞれ神様のお導きにより選ばれた勇者様が誕生したって言うんだから魔王なんて恐れる事はないよな」
「だな」
「あと、勇者様のパーティーメンバーになる者達も一緒にそれぞれ神様のお導きで選ばれたらしいぜ」
「勇者パーティーが三つか。魔王が動きだしても、本当に大丈夫じゃないか?」
「本当だな」
街の人々は魔王復活の噂を聞いても、勇者達が現れた事に安心しきっていたのだった。
しかし、それも仕方ないのかも知れない。
実際に魔族を見た者や力を知る人間はほとんど居ないのだから。
ーーーー
北に地域に位置する魔族の国『魔国』。
「100年ぶりか……」
「左様でございますね。丁度100年でございます魔王様」
100年ぶり目覚め復活した魔王城の王座の席。
そこにどっしりと座るのは魔族の王こと魔王。
その魔王に話しかけたのは、魔王が居ない間の100年間、魔族の国を統治して魔族達を指揮してきた魔族の男。
「我輩が眠ってる間、ご苦労だったなレギアス」
「ありがたきお言葉感謝致します魔王様」
魔王の労いの言葉に、方膝を着き頭を下げる統治し指揮してきた魔族の男レギアス。
「それで、人間達の方はどうだ? 貴様達は我輩の言いつけは守っておったのか?」
「ははっ! 我ら魔族はこの100年は一度も人間の国には攻めておりません。しかし、いつでも攻める準備は出来ております」
「そうか……」
魔族達はこの100年間、魔王の『人間の国には手を出すな』という言いつけを守り続け人間の国に攻めいることはなかった。
たまに若い魔族が人間を襲いに向かう事はあったが、それは些細な事。
「魔王様。ひとつ、報告がございます」
「何だ? 言ってみろレギアス」
「ははっ! 人間の国に勇者が三人現れたそうでございます」
「勇者か……別に気にするほどではなかろう」
「おっしゃる通りでございます魔王様」
本当に興味のないといった表情の魔王の言葉に対してレギアスは同意した。
「もしその勇者など含め人間がこの魔国に攻めてくる様ならば殺してしまえ。そして……魔族の人間の国へ攻めこむ事を解禁とする」
「かしこまりました。魔王様」
魔王に対して頭を下げるレギアスは口元をニヤリとさせ薄く嬉しそうに笑っていた。
100年ぶりに目覚め復活した魔王。
そして、魔王の解禁宣言により100年ぶりに人間の国へと攻めこむ事が可能となった魔族達は動きはじめる。
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