Episode 59
頭を上げて再び話だしたアシュリー。
「提案の続きなのですが、精霊竜は私にこう助言いたしました「今よりも強さを求めたいのならば我らと旅をするのが良いだろう」と」
「精霊竜……様が……なるほど」
今の国王は精霊竜の助言だという言葉に納得して頷くしかできない。
怒らせてはいけないのだから。
「だったら僕達もアシュリーとーー」
「それでは意味がないのです勇者様」
レオンの言葉に首を横に振りすぐに返したアシュリー。
「私達の最終的な目標はなんですか? 勇者様?」
「魔王を討伐して世界を平和にすること……だねアシュリー?」
「はい……そうです。しかしながら今の私達じゃ何十年、いや100年経ってもそれは不可能でしょう……もしかしたら他国の勇者様達が討伐してくれるかもしれませんが……」
「それはならぬ! わしの国ウェスタリア王国が魔王を討伐しなくては意味がないのじゃ!」
アシュリーの話に国王が声をあげた。
ウェスタリア国王のプライドである。
イースラ王国、サウザトリス王国には負けられないと。
だが、国王の反応はアシュリーの予定通りである。
「では……許可をお願いします国王様。私がもしも死んでしまった場合、精霊竜も力はこの"ウェスタリア王国"には貸してくれないでしょう」
「……わかったアシュリーよ。主の一時的な勇者パーティーからの離脱をこのわしウェスタリア国王が認める」
「ありがとうございます国王様。このウェスタリア王国の為に私は今よりも強くなり、今回の様な犠牲を出さないように努めてまいます」
「よしわかった。期待しておる『英雄の女神様』よ」
「はい!」
心ではガッツポーズをしているだろうアシュリー。
全てはアシュリーの計画通りの予定で進んだのであった。
ーーーー
城の自分の部屋に戻ってきたアシュリーとカシとヤン。
「上手くいったな主?」
「予定通りよ。それに強くなる為っての別に嘘じゃないのよ?」
「確かに主の言う通り、レイフォン様と一緒に旅をした方が強くなるだろう」
「レイってそんなに強いの?」
「うむ、レイフォン様が幼い頃に我は1度だけ手合わせをさせて頂いたが……我の完敗だった」
少しだけ口元を緩めて見せたカシ。
「へっ? レイって神様が願い事を叶えて強くなったんじゃないの?」
「ん? レイフォン様は『インフェルリア』の国ではどんな魔法でも使える天才と言われておられたのだ」
「天才?」
「いや、あれは天才と言うより天災だぜ主。レイフォン様が本気になったらこの世界は簡単に滅ぶんじゃないか?」
「世界が……滅ぶ?」
アシュリーはふたりの話に呆気にとられていた。
「け、けど神様が『世界最強』の力をレイに与えて、それでレイは強くなったんじゃないの? だけど……」
(そういえば……昔レイの魔法をはじめて見たとき、あのゴブリンの数を簡単に倒してたわよね確か……)
「神様がおっしゃるのであればそれも嘘ではないだろう」
「元々世界最強のような力をもったレイフォン様が『世界最強』の力とかヤバすぎるぜ!」
アシュリーは少しだけ自分でも思い当たるふしがあったと思っていた。
その時
アシュリーの部屋のドアがノックされた。
「アシュリー? ちょっといいかい?」
レオンの声。
「主よ、我らはそろそろ精霊界に帰る」
「わかったわ。ふたりとも協力してくれてありがとうね」
「うむ」
「またな主!」
「あっ! あと……私のことは名前で呼んで? "様"はいらないわよ」
「わかったアシュリー」
「わかったぜアシュリー! またなアシュリー!」
カシは表情を変えずに頷き、ヤンはどこか嬉しそうにアシュリーの名前を呼んでいた。
そして、ふたりの姿は消え去ったのだった。
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