Episode 56
レイフォンの口から語られたレイフォンの秘密と真実。
話を聞いたアシュリーは泣いていた。
「ど、どうして泣くんだよ? って? 神様まで……」
神様も鼻水を垂らして泣いていた。
「だって……もし私だったらって想像したらそんなの耐えられないわ……どうして……どうしてレイはそんなに強いのよ……」
「俺は神様に『世界最強』にーー」
「違うわよバカ! レイはどうして平気そうにしていられたのよ……あの時、レイはまだ四歳よ?」
「すぐにお前に……アシュに出会えたからじゃ理由にならないか?」
「えっ?」
レイフォンの意外な答に驚きを見せるアシュリー。
「あのままひとりだったら俺もどうなったかはわからない……けど毎日のように俺の家に乗り込んでくる狂暴で偉そうな女の子に備えることが大変で悲しむ余裕がなかったのかも知れないな」
レイフォンは笑顔で話した。
「何よそれ……狂暴とか偉そうとか……」
「だって事実だろ? けど……アシュが居てくれて俺は本当に良かったて思ってる。ありがとうアシュ」
「レイ……」
見つめ合うかたちのふたり。
「私も……レイが『インフェルリア』の王子様だったりとレイの本当の過去を知って驚いたわ……だけど……私にとってレイはレイなの。例え魔族だろうとなんだろうとレイはレイなの。だから……私と出会ってくれてありがとうレイ」
「なんだよそれ?」
「私だって何を言っているのかわからないの! レイのお母様には負けるけど、私にとってレイは大切な人なのよ! わかった?」
アシュリーの顔は恥ずかしさから顔が真っ赤だった。
「なら俺と一緒だな。俺にとってアシュは、アシュリー・テンペリスはこの世界で今最も大切な存在だ」
微笑んで返すレイフォンの言葉はまるで愛の告白である。
「そ、それって……」
口元を両手で押さえてそわそわさせるアシュリー。
その時ーー
「ごほん! ボクが居ることを忘れていないかいふたりとも?」
空気を読まない神様。
「か、か、神様!?」
アシュリーは完全に神様の存在を忘れていたようだ。
動揺している。
「そういえば居たな神様」
レイフォンも神様の存在を忘れていたようだが動揺は見られない。
「"また"ふたりがチュッチュッするんじゃないかとボクはーー」
「神様……今何て言いました?」
「またふたりがチュッチュッってーー」
「何故、神様がその事を?」
ポロリと発した神様の言葉を聞いたアシュリーの目は笑っていない。
「だってあの時、ボク見てた…………って、ア、アシュリー?」
神様はようやく気づいた。
赤い魔力を体から溢れ出させている恥ずかしいような怒ってるような、顔を赤くして目が笑ってないアシュリー。
「……双炎竜! カシ! ヤン! どうにかして神様の記憶を消しなさい!」
アシュリーの呼び出しにより現れた人間体の炎竜姉妹のふたり。
「? わからぬが主の命令とあらばかしこまった」
「わかんないけど、あれだよな? 神様が記憶をなくすまでオレ達がボコれば良いんだよな主?」
「そうよ」
それを聞いた神様は子犬の姿になり屋敷から逃げ出した。
「レイフォンより容赦がないじゃないか~! アシュリーは! ヘルプミー神様!」
自分なんてアシュリーに比べたら優しい方だと思うレイフォン。
「追いなさいカシ! ヤン! 生きてればそれでいていいわ」
「うむ」
「いってくるぜ!」
状況を見ていたレイフォンは
「自業自得だ……安らかに眠れ神様」
と目を瞑り手を合わせていたのであった。
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