Episode 55
幻の天空の国『インフェルリア』の国民は自分達の事を『天空人』と呼んでいた。
天空人は誰しもが魔力を精霊に引き換えにすることなく魔法の行使が出来た。
その魔法の力は地上の人間と比べると格段に上だった。
その気になればこの国は世界を征服することも滅ぼすことも出来ただろう。
しかし『インフェルリア』の国民性は穏やかな性格な持ち主ばかりで、ただ平和に過ごせれば良いと思っている人々がほとんどだった。
『インフェルリア』は強大な魔法結界が張られており神様でさえも観賞が難しい国でもあった。
そんな国が突然と滅んだのである。
原因不明の感染症。
それに感染したものは必ず死亡した。
天空人の魔法でも治すことが出来ない感染症。
三百人程度の国民全員に感染するのはそう時間はかからなかった。
ただひとりを除いては。
ーー
「貴方は地上に降りなさい」
「どうしてだよ母上!」
「もう貴方以外は助からないのよ……」
「だったら母上も父上もみんなも地上に逃げれば良いだろ!」
「それは出来ないの……地上の人達に感染してしまうでしょ?」
興奮状態の幼いレイフォンに対してレイフォンの母親であり王妃は優しく話しかけていた。
「そんなの知ったことじゃーー」
「時間がない……すまないレイフォン」
「父……上? ……」
レイフォンは父親の国王に魔法で眠らせられたのである。
「私達の分まで生きて……レイフォン……」
薄れゆくなか聞こえた声。
これがレイフォンが最後に聞いた大好きな母親の言葉だった。
ーーーー
レイフォンは知らない部屋のベッドで眠っていた。
目覚めたレイフォンは思ったよりも何故か落ち着いていた。
「母上……父上……みんな……」
そして、テーブルに置いてある手紙を発見したレイフォンはそれを読んだ。
『生きろレイフォン』
ただひとこと、そう書いてあった。
「父上の字だ……相変わらず短いな……こっちのは母上のかな?」
その手紙には
『そこの街の人達には魔法をかけてあるわ。だからきっと街の人達はレイフォンを受け入れてくれるはずよ。レイフォンは私に似てしっかりした子なのだから大丈夫よ。頑張らなくても良いから生きなさい。私達の大切な大切な大切な宝物レイフォンーー愛する母より』
「母上……父上……」
レイフォンは泣いていた。
しっかりした様に見えてもレイフォンはまだ、たった四歳の幼い子供である。
「俺……生きるよ絶対に」
そして数日後に出会ったのがアシュリーであった。
「あなた、ここの子なの?」
「そうだけど覗き女」
「はっ? なにこのなまいきなちびっこは」
自分の事は棚にあげて、こいつは偉そうだ、嫌いだと、レイフォンははじめて会ったアシュリーの事をそう思っていたのであった。
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