Episode 54
「わかったよ話す……けどその前にアシュはこの話を知っているか?」
約500年前の昔、精霊に魔力を引き換えに力を貸してもらわずに魔法を行使することが出来る人間達が存在していた。
一般的に人間は魔法を行使する為には魔力を引き換えに精霊に力を借りるとされていた。
例外と言えば魔族ぐらいであった。
人々はそんな彼等を差別した。
「人間ではない」、「魔族だ」、「怪物」、「化け物」だと。
いや、恐れていた。
彼等の魔法は強大だった。
そんな彼等は人々を恨んだりすることもなく、人間の暮らす地から離れた。
いや、追い出された。
そして最終的に彼等が辿り着いた場所は空に浮かぶ島だといわれている。
その島で独自の国を作り上げて生活をしている。
幻の天空の国『インフェルリア』。
嘘か本当かはわからないがそんな国が存在するとささやかれていた。
今では『インフェルリア』を題材に様々な物語が書かれている。
昔に人々が追い出した彼等の作り上げた国を今では憧れの様に思う人間達。
皮肉なものである。
「知ってるわよ。幻の天空の国『インフェルリア』は有名だもの。私も題材にされた恋愛小説が好きで……って勘違いしないでよね!」
「何をだよ?」
急に顔を赤らめたアシュリー。
「とにかく、その『インフェルリア』とレイにどんな関係があるって言うのよ?」
神様も興味津々の様子で話を聞いていた。
「その国は実在するんだよ。いや……正確には実在していた……だな」
「はっ?」
「まさか、国の名前が正確に広まってるとは驚いたけど、それはきっと地上に降りた『天空人』が広めたんだろうな」
「天空人? レイはさっきから何を言っているのよ? 私にはまったく話が見えてこないわ」
はっ、とした表情を見せた神様。
「神様は気づいたみたいだな?」
「うん。レイフォンの魔法と力の秘密もこれで納得出来たよ。まさか君が……ね……」
神様の表情は暗い。
「そんな顔するなよ神様」
「だって……」
「別に神様のせいじゃないんだから。ただ……運が悪かっただけだ……」
「……」
「えっ何? 神様はわかったんですか? それに何かを知ってるんですか?」
アシュリーは神様に詰め寄り尋ねた。
「ボクが話しちゃってもいいのかな?」
神様はレイフォンをチラっと見て確認した。
レイフォンは黙って頷いた。
「アシュリー? この事は絶対に誰にも話してはいけないよ? 例え国王だとしてもだよ?」
神様の表情は真面目だった。
「はい」
それに対してアシュリーは真剣な表情で頷いた。
「まずは……レイフォンの本当の名前は、いや正式な名前はレイフォン・インフェルリア……だよね? レイフォン?」
「……ああ」
「イン……フェルリア?」
神様はレイフォンに確認をして、それに対してレイフォンは頷いた。
アシュリーはまだわかっていないようだ。
「幻の天空国『インフェルリア』は実在した。そしてレイフォンはその国のたったひとりの王子なんだよ」
「正確には"だった"だけどな……」
レイフォンは呟くように神様の話に補足した。
「レイが『インフェルリア』の王子……様?」
アシュリーはキョトンとした表情で首を傾げたのであった。
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