Episode 51
「上級魔族ってのは……あれよ……」
「あれじゃわかんねーよ?」
「上級魔族ってのは通常の魔族とは違い形体を変化させることができるんだよ。この前、レイフォンが倒した魔族もそうだったでしょ?」
「そういえば」
「上級っていうぐらいだからもちろん形体を変化させなくても魔力が高くて強いんだけど、形体変化後は魔力も強さも倍以上に膨れ上がるんだよ」
「なるほどな」
アシュリーの代わり上級魔族について説明をした神様。
「わかったレイ?」
「お前が胸を張るなよアシュ」
何故かまるで自分が説明をしたかの様に豊かな胸を張っているアシュリー。
神様は説明を終わるとまた、ケーキを美味しそうに頬張り食べはじめていた。
「うるさいわね! レイは細かいのよ! それで? レイはこの前の上級魔族をどうやって倒したのよ?」
「前にも言ったけど、俺があいつの心臓を潰した、以上」
「誰がそれで納得すると思うの?」
「心臓潰されたら普通は死ぬだろ?」
「いや……そうじゃなくて……経緯を説明しなさいよ」
「魔法でこんな感じに……あいつの心臓だけを取り寄せて……こんな感じに潰した」
レイフォンはテーブルにある赤い実を転移魔法で手に取り寄せて掴みそれを握り潰してみせた。
「何よそれ……無茶苦茶ね」
アシュリーは呆れていた。
「あれ? 驚くと思ったんだけど?」
「色々と驚くことが続いたおかげで耐性がついたのかも知れないわね。それとレイが魔法を使った事を言っているのなら、私は昔からレイが魔法を使えたことは知っていたわよ?」
「へっ?」
レイフォンはテスターの街に暮らしている頃はアシュリーにも誰にも自分の魔法を見せたことはない。
「何をそんなまぬけな顔をしているのよ? レイがテスターの街で"暮らしはじめて"から一緒に過ごして何年経つと思ってるの?」
「ちょっと待て!? 俺はテスターの街で生まれ育ってーー」
「そうね……お父様や街の人達はそう思ってるわ。だけど私は知ってるのよ……レイが突然現れてまるでテスターの街で生まれて、はじめから暮らしていたようにしていた事は……」
流石のレイフォンもアシュリーの話に驚きと動揺を隠せない。
「ほ、ほら? だけど俺の両親は魔物に殺されてそれから俺はひとりで暮らしてーー」
「お父様や街の人達もそう思ってるみたいね。昔の私はそれが不思議だったけど、幼かった事もあって、あまり気にしていなかったわ」
「…………」
(どうしてこのタイミングなんだ……それに何故アシュは知っている……)
「レイはどうして? とかこのタイミングで? とか思ってるんじゃない? それと……何故知っているってね?」
アシュリーのまるで心を読んでるかのような言葉。
レイフォンは唇を噛み締めて険しい表情をしていた。
(俺が魔法を使えた事をアシュが知っていたことはまだいい……だけど……)
「レイ? レイが何かを隠していた……いえ……秘密にしていたことは私は薄々感じていたの……そろそろ私には本当の事を話してくれてもいいんじゃないの?」
アシュリーは優しい表情でレイフォンにそう言ったのだった。
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