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Episode 5

「ふたりともおかえりなさい。そして依頼お疲れ様」


 レイフォンとアシュリーの2人はギルドに戻り、ミリアに依頼達成の依頼書を渡し報告していた。


「レイは何もしてないですけどね」


「俺だって囮になって必死に逃げて走りまわっただろ!」


「そうだったわね」


「俺の幼馴染みがひどい……」


 アシュリーの扱いに少ししゅんとするレイフォン。


「ははは……とにかくふたりともお疲れ様。はい、今回の依頼達成の報酬よ」


 ミリアは苦笑いしたあとに2人に報酬を渡した。


「「ありがとうございます」」


 ハモるふたり。


「息ぴったりねふたりとも。ふふっ」


 楽しそうに笑うミリア。


「レイ、何で私とハモってるのよ!」


「アシュ、それは仕方ないだろ!」


 理不尽だとアシュリーの言葉に言い返すレイフォン。


「おいおい、また始まったぜ夫婦喧嘩が」


「いや、あれは姉弟喧嘩だろ?」


 ギルドの酒場にいる冒険者達がまたはじまったか、と話しだす。


「何? レイは私に言い返すの?」


「今のは流石に理不尽すぎるだろ?」


「"お姉さん"の私にそういう事を言うのねレイ?」


「誰が"お姉さん"だって? "お姉さん"ならもっと"弟"に優しくしてくれてもいいんじゃないか?」


「はっ? レイは優しくしたらすぐに調子に乗るでしょう?」


「アシュはアメとムチって言葉をしっているか?」


「し、知ってるわよ?」


「なら、言ってみろよ?」


 睨み合う2人。


「まあまあ、じゃれあうのはそのくらいにして、ね?」


 2人の仲裁に入るミリア。


「「じゃれてません!」」


 ミリアの言葉に息ぴったりにハモるふたりであった。



 ーー



「レイのせいでまた変な誤解を受けたじゃない」


「俺のせいだけにするなよな、パクっ おっ、これ旨いな」


「パクっ あら、本当だわ」


 何だかんだ言い合ったふたりだが、ギルドを出たあとに一緒に食事をしていた。


「レイ君、アシュリー様、それは夫の新作料理なんですよ」


 話しかけてきたのはふたりが現在食事をしている定食屋のオーナーの奥さん。


 ちなみにふたりはここの定食屋の常連である。


 ふたりは定食屋のオススメセットを食べていた。


「牛肉を煮込んで作った黒いシチューなんだけど、まだ名前が決まってないのよ」


「シチューなんですか? このお料理、見た目はちょっと……あれですけど……甘味もあってお肉がトロトロで口の中で溶けて凄く美味しいですよ」


 アシュリーは見た目に関しては少し言いにくそうに話ながらも、この黒いシチューを絶賛した。


「ありがとうございます。アシュリー様」


「ビーフシチュー……」


 奥さんがアシュリーににこやかに微笑みながら礼を述べたあと、レイフォンが突然と頭の中に浮かんできた言葉を口にした。


「ビーフシチュー? 何だかこのシチューにぴったりな名前ね。その名前頂いても良いかしらレイ君?」


「あっ、はい」


「ありがとうレイ君。早速、夫に言ってくるわ。ふふ~ん♪」


 レイの口にした名前が気に入ったのか奥さんはニコニコと鼻歌まじりに厨房の方へと向かって行った。


「私もビーフシチューって名前はこの料理にぴったりだと思うけど、レイってそんなにネーミングセンスあったかしら?」


「俺にもよくわからない。けど、まっ冷めないうちに食べようぜ?」


「ふ~ん。まっそうね」


 急に頭に浮かんだ知らない言葉。


 ブラックベア討伐の為に向かった森でうたった歌の時もそうだった。


 本当にどうしてかわからないレイフォンは少し考えたがすぐにやめて、食事をする事を優先させた。


 アシュリーもそんなレイフォンを少し気にしたがレイフォンの言葉に頷き食事を再開させた。


 レイフォンはビーフシチュー(仮)をパンで一滴も残さずキレイに拭きとるように食べ終えた。


「これで皿を洗わずに済むな」


「……洗うに決まってるでしょ」


 キレイになった食器を自慢気に見せてくるレイフォンにアシュリーは呆れた表情を見せて言葉を返すのだった。




 ーーその後、食事を済ませた2人は解散してそれぞれの家へと帰って行った。




 黒いシチューは後日、正式にビーフシチューと名付けられたのである。




お読み頂きありがとうございました。

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