Episode 43
「そうそう。俺が神様に叶えて貰った願い事は『世界最強』なんだよ。まっそんなわけで世界最強になった俺ってなわけで……俺は最強なわけだ」
「はっ?」
今の状況で普通に話しをするレイフォンの意味のわからない言葉に、アシュリーは戸惑いを見せていた。
「まっいきなり『世界最強』って言われても困るよな? そうだな……おい魔族? あんたって強いのか?」
「強いだと? 私に命令出来るのは魔王様とレギアス様だけだ!」
「別に命令じゃないんだけどな。つーことはこいつは魔族の中ではトップの地位にいる魔族って事なわけだ」
アシュリーは戸惑いを通り越して呆気にとられていた。
もちろん、マイペースなレイフォンに対してである。
「貴様が世界最強だと? ……フッ笑わせてくれるわ」
「爪を抜けないあんたが言うなよ?」
話を聞いていたレゾナスが言葉を発するがレイフォンに言い返された。
爪を抜けない魔族のレゾナスとそれを受け止めたまま普通に話しをする人間のレイフォン。
なんとも、シュールな一体とひとりの光景である。
「でだ、アシュは俺がこいつを倒したら少しは信じてくれるか?」
『レイフォンはボクを誤魔化しの理由に使うもりだね?』
『なんのことだ? 神様が俺を『世界最強』にしてくれた事は事実だろ?』
『そうだけど……』
惚けるレイフォンと何か言いたそうな神様。
「信じるとか信じないとかじゃなくて……ああ! 何なのよ! この状況は!」
さっきまで殺されるかも知れないと思っていたアシュリー。
だが、今の状況はなんとも緊張感がなかった。
その原因はレイフォンにあるのだが。
「さっきから私が大人しくしていると思って人間がーー」
「まだ話の途中だ。あんたはもう少し黙ってろよ?」
「くっ!」
何故かわからないがレイフォンに逆らえないレゾナス。
ーー
(今の状況はなんなの? レイはどうしたのよ? 神様? 願い事? 世界最強? レイが魔族を倒す? 何? 何なのよ……今日はいったい……)
正確には昨晩からだが、アシュリーはレイと王都
で再会した事から、魔族の襲撃、双炎竜事までさかのぼり、今の状況に困惑していた。
(けど……)
まるで身動きがとれずに苦々しい表情を浮かべるレゾナスに対してレイフォンは、レゾナスの鋭い爪を二本の指だけ受けとめたまま普通と言うかマイペースにというか……のんきに話している。
まるでではなく今のレゾナスは本当に体が動かせないのだが。
「アシュ? あんま難しく考えるなよ? とにかく今の俺は強いOK?」
「……何がOKよ! 何よこの空気? もう~! 本当にわけがわからないのよバカ! どうしてくれるのよ! この気持ち? 倒すなら早く倒してみせなさいよバカ! バ~カ!」
開き直ったといっていいのかわからないが、アシュリーはレイフォンに子供みたいに文句を言った。
「わ、わかったから落ちつつけよアシュ?」
「落ち着けですって? 誰のせいでこんな気持ちになったと思ってるのよ! あとで詳しく話して貰うんだから……倒せるならさっさと倒しなさいよバカ!」
アシュリーの勢いはとまらない。
「わ、わかったから……はぁー」
『ぷぷのぷー』
溜め息をつくレイフォンと状況を見て楽しそうな神様。
「ということなんで……悪いけどあんたは俺にここで倒されてくれ? OK? ほらよっ!」
アシュリーからレゾナスに視線を変えて話しかけたあとにレイフォンはレゾナスの爪を離した。
それと同時に身動きがとれるようになったレゾナスは一旦後ろに下がりレイフォンから距離をとった。
「さっきから……ふざけたことを抜かしおって……絶対に許さん……許さんぞ貴様!」
そして直後
レゾナスの体が変化をはじめたのであった。
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