Episode 40
王都の街を駆けまわり次々と魔族や魔人達を殲滅していく美女と美少女の双炎竜ふたり。
「ふっ、弱すぎるな」
「だな。けどまさか姉貴が人間との契約をOKするとは思わなかったぜ?」
「"あのお方"が主の力になってやれと申したのだ。我がそれに従うのは同然ではないか」
「だな。けど姉貴は本当は"あの方"と契約を結びたかったんじゃないのか?」
「バカを言うな。"あのお方"に我らの力が必要だと思っているのか? 我は"あの方"が大事に想う主と契約を結べただげで満足しておる」
「だな。突然契約を結んだけど、主にはどう説明するんだ?」
「それは我が主に上手く説明するからお前、ヤンは何も喋るではないぞ?」
「わかってるって」
無表情な姉のカシとニコニコとした表情の妹ヤンの炎竜姉妹。
それからもカシとヤンふたりは次々に魔族達の殲滅を続けていった。
王都の街の人々は簡単に魔族や魔人を倒していくふたりの様子を見て「神様の使者様」、「女神様」、「救世主様」などと歓喜の声をあげていた。
だが、ふたりはまったく気にしていない様子であった。
ーーーー
明け方の時間。
アシュリーは通りかかった警備隊にレオン達三人をお願いし預けたあと、王都の街を走っていた。
どこを見ても生きている魔族や魔人の姿はなかった。
喜び合う王都の街の人々。
(カシとヤンが倒したのね……)
自分達では苦戦していた魔族達を簡単に倒し殲滅していっているふたりの事を考え、感謝しながらも複雑な思いのアシュリー。
「あの? 銀髪でこのくらいの伸長の少年をみかけませんでしたか?」
「おお! これはアシュリー様! 魔族どもを次々と倒していったのは勇者様達のお仲間ですか?」
「……ええ」
「やはり! そうでしたか! どうか、おふたりに助かりましたとお伝えくださいませ」
「……ええ、で、その……」
「ああ、はい申し訳ございませんアシュリー様。銀髪の少年でしたよね? 私は残念ながら見ておりません」
「そうですか……ありがとうございました」
アシュリーに尋ねられた街の男性は「いえいえ」と言って去っていった。
(レイは無事よね……)
アシュリーは旅で王都に訪れていたレイフォンを探していた。
すると現れた銀髪の少年。
「よっ! アシュ。無事だったか」
うしろから聞こえたレイフォンの声にアシュリーは振り返った。
「それはこっちのセリフよレイ! 心配したのよ!」
「いや、俺って逃げ足だけは早いからな。適当に隠れていた」
心配していたアシュリーに対して"タイミング"よく現れ、のんきに手をあげて言葉を返すレイフォン。
「……それにしても流石は勇者達だな」
レイフォンは辺りの魔族と魔人達の遺体を見て言った。
むろん遺体は魔族達だけのものではない。
「それは……」
私達じゃない、とははっきりとは言えないアシュリー。
レイフォンは見ていたので知っていた。
その時
「どういう事だ! この状況は! 何故だ! 何故ベノムまでもが殺られているのだ? 貴様だな人間!」
レイフォン達の目の前に突然と姿を現したのは第九魔王軍将軍レゾナス。
レゾナスの目はアシュリーの姿をとらえていたのだった。
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