Episode 36
レイフォンはアシュリーの様子を神様と共に上空から眺めていた。
『レイフォン? 幼馴染みが気になるのはわかるけど、そろそろ他の場所も見に行こうよ?』
『ひとりで、いや一匹? 一神? どれだ?』
『そんなのなんでもいいよ!』
『なら一匹で』
『やっぱり……匹ってのはやめてもらえるかな?』
『……で、他の場所を見たいなら神様だけで行って見てくればいいだろ?』
『か弱いボクが"ひとり"でいけるわけないじゃないか。ボクに何かあったらどうするんだい?』
『いや、知らないから。つか、数えかたはひとりなんだな。どうでもいいけど』
地上では大変な状況だというのにレイフォンと神様のふたりからは、なんというか緊張感がまったく感じられない。
『おっ、アシュが移動するみたいだな』
『そうだね……ストーカーくん』
アシュリーの動向を追うレイフォンには神様の言葉など聞こえていなかった。
ーーーー
「そろそろ大丈夫そうね」
そう言ってゆっくりと立ち上がったアシュリーはミミーが走り去った方向へと歩きだした。
アシュリーの歩く道には魔人の遺体と……王都の街の人々の遺体が転がっていた。
「くっ」
唇を噛み締めて悔しそうな表情を浮かべるアシュリー。
(私が……のんびりと休んだりしていなければ……そして、もっと私に力があれば……)
助けられたかもしれない命、だとアシュリーは感じていた。
ーーーー
『地上は大変な事になってるね』
『そうだな』
アシュリーと同じく転がる遺体を確認したレイフォンと神様のふたり。
『レイフォンが……』
力を使えば救えたんじゃないかい?
と言おうとした神様。
だが、途中で言葉をとめる。
『うん?』
『いや、何でもないよ……』
『俺が力を使えば救えたとでも言いたいのか神様は?』
『いや……そういうわけじゃないんだけどね……』
鋭い、と思った神様だが「そうだよ」とは言わなかった。
『かもしれないな……実際はわからないけどな』
『なら……いや……ごめん』
やはり「どうして?」とは聞けない神様。
『うん? 別に神様が謝る必要はないさ。実際に助けられたかもしれないんだからな。けど、それは駄目というか違うんだよ。俺にもよくわからないんだけどな、今こうして王都の街の人達の遺体を見ても何も感じないというか……とにかく俺にもよくわからないんだよ……』
『それは……』
レイフォンの話に言葉がでない神様。
『けど……アイラの時は少しだけ怒りを覚えた。そして、もしもアシュリーが殺されたと考えたら……』
『……考えたら?』
『"俺は世界でも滅ぼせる"かもしれない……なんて、流石にそれは無理だろうけど、そういう感情は湧くと思うかな』
『……そ、そうなんだ』
一瞬だけだがレイフォンの感情がこもっていない冷たい声を聞いた神様は寒気を感じていた。
『だから……まっ理由としては不十分だけど俺は英雄みたいに人々を助けて救うなんてことはしないと思う。絶対とは断言はできないけどな』
『……うん。わざわざ話してくれてありがとうレイフォン』
神様は頭の中で色々と考えていた。
『うん?』
『ど、どうしたんだい?』
『いや、神様がお礼なんて言うから?』
『ボ、ボクだってお礼ぐらいちゃんと言えるよ!』
『そうか?』
レイフォンに考えを読まれたかと一瞬動揺してしまったが、そうではないとわかりほっとした神様であった。
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