Episode 35
「……なんとか倒せたみたいだね」
「そうだな……」
場所を移動しなんとか魔人達を倒したレオンとマットのふたり。
その時ーー
「魔人を倒してしまうとは流石は勇者といったところですか?」
「魔族!?」
現れたのは第九魔王軍将軍レゾナスの右腕の部下
魔族ベノム。
その後ろにも数体の魔族達の姿が見える。
「思ったよりも簡単に倒されてしまいましたね……改良の予知ありと……」
ベノムはのんきにメモをとっていた。
「お前達はどうして人間を襲うんだ!」
「はい? 言ってる意味がわかりませんね」
「ふざけるな!」
「ふざけてませんよ? 逆に何故、人間を襲って殺してはいけないのですか?」
声を荒げるふたりに対してベノムは本当に意味がわからない、そんな表情を浮かべていた。
「マット……魔族とは話しても無駄のようだ」
「そうだな……」
「私の質問には答えてくれないのですか? まっいいでしょう……ひとまず……目障りなんで死んでいただけますか?」
ベノムがそう言うと同時にうしろに控えていた魔族達がふたりに襲いかかる。
「こいつらが勇者だってよ?」
「まじか?」
「殺しがいがあるな」
楽しそうな魔族達。
そんな魔族達に対して顔をしかめて構えるふたり。
「ここは使うべきだね……」
剣を構えるレオンは呟いたあとに瞬時に動いた。
そしてーー
スパッ スパッ スパッ スパッ
ベノム以外の魔族達の体が一瞬のうちに両断されていった。
両断したのはレオン。
レオンの構える剣からは溢れる白い魔力で覆われていた。
「あら? 殺すつもりが逆に殺られちゃいましたね。それは何ですか?」
仲間の魔族が簡単に殺されたというのに表情を変えないベノム。
むしろ楽しそうにも見える。
「神様に与えられた"勇者だけ"が使える力さ」
「神の力ですか……なるほど」
またしてものんきにメモをとるベノム。
「レオン……いつの間に覚えたんだ?」
「アシュリーの努力する姿を見てね。こっそり僕も覚えていたんだよ。まだ、完全ではないけどね」
「そうか……」
(流石は勇者様だな)
徐々に消えゆくレオンの剣を覆った溢れる白い魔力。
「……ふぅー これは結構魔力を持っていかれるね」
「大丈夫かレオン?」
少しよろめいたレオンを心配するマット。
「ああ、大丈夫だ」
そして、ふたりの鋭い視線はベノムをとらえる。
「……次はお前だ!」
「私ですか? そんなちっぽけな力が私にも通用するとでも思ってるのですか?」
宣告するレオンの言葉に対して余裕の表情を見せるベノム。
「レオンは少し休んでいろ……まずは俺からーー」
槍を構えたマットがレオンに言葉をかけようとしたその時
ーースパッ
「えっ?」
「マ、マット!!」
マットの両腕が……
切断された。
「何がまずは俺からですか? 次は殺しますよ?」
何が起こったのかわからないマット。
直後に切断部分から大量の血を流して地面に倒れこんだ。
ベノムの両手には地塗られたふたつの鎌が握られていた。
「マ、マット!? き、貴様ぁあああ!!」
「そんな怖い顔をしてどうしたんですか? それと私のことはベノムとお呼びください……勇者"様"」
怒りの感情を見せて吠えた勇者レオンに対して楽しそうにうっすらと笑みを浮かべるベノムであった。
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