Episode 34
一般的に魔法は魔力を引き換えに使い精霊の力を借りることにより行使ができる。
強力な上級魔法ともなると魔法を行使する者は魔力とは別に精霊に対価を捧げなければならない。
今回、アシュリーが捧げた対価は生命エネルギー、すなわち寿命である。
と言っても今回の上級魔法なら一日分程度である。
「はぁー はぁー はぁー ……」
「アシュりん大丈夫?」
息を切らすアシュリーにミミーは心配そうに声をかけた。
「はぁー 大丈夫よミミー……それより魔人達は?」
「この場所の魔人達はアシュりんの魔法で全滅したわ」
「そう……良かったわ」
アシュリーの魔力はほとんど残っていない。
「なら早く……私達も次の場所に向かいましょう、あっ!」
歩き出そうてしたアシュリーだが、力が入らずよろけてしまう。
「おわっ! アシュりんは少しこの場所で休んでて」
「だけど……」
「魔力あまり残ってないでしょ?」
「……だ、大丈夫よ」
ミミーに支えられながらアシュリーは強がった表情を見せて答えるが、ミミーは首を横に振った。
「ひとりじゃまともに歩けないのに何を言ってるの? 少し休んで歩けるようになったら来なさい。わかった?」
「うん……」
「じゃあ、私は先に向かうからアシュりんは回復したら来なさい」
「……ミミーがお姉さんに見えるわ」
「私はアシュりんより年上なの!」
「そうだったわね……ふふっ」
「なんで笑うのよアシュりん! まっいいわ……その様子だとすぐに回復しそうね。なら、私は先に行くわ」
「……うん。ありがとうミミー」
ミミーはアシュリーをゆっくり地面に座らせたあと、レオン達の向かった方向へと走り消え去っていった。
ーー
ひとり残されたアシュリー。
「上級魔法を一回使っただけでこれか……」
アシュリーは自分の未熟さを感じていた。
ーーーー
『レイフォンの幼馴染みなかなかやるね?』
『だろ?』
レイフォンと神様は姿を消して上空からアシュリーの様子を傍観していた。
ちなみにレイフォンは念のために白いフードと白い仮面で変装している。
『けど、上級魔法を一回使っただけで魔力切れを起こすようじゃ、この後の戦いは厳しいだろうね』
『そうなのか? で? 上級魔法ってなんだ?』
『えっ? そこからなの?』
『だって魔法は魔法だろ?』
『そうだけど……そういえばレイフォンはどうやって魔法を覚えたんだい? ちなみに今君は上級魔法をふたつ同時に使ってるんだよ?』
『覚えたというか……気づいたら使えたって感じかな? それで俺が今使ってる上級魔法って?』
『使えたってめちゃくちゃだね君は……本当に規格外というか……でね、レイフォンが今使ってる上級魔法は「浮遊」と「透明化」の魔法だね』
神様はレイフォンに呆れていた。
『へぇ~、神様を真似てみただけなんだけどな』
『はっ!? 前から使えたとかじゃなくてかい? というかボクのは魔法とは違うからね?』
神様はレイフォンと旅をしてレイフォンの様々な魔法を見てきた。
レイフォンが使う魔法はほとんどが一般的な魔法ではなかった為にレイフォン=規格外と認識していたのだが、まさか見ただけで同じような魔法を使えるとは思っていなかった。
『そうなのか?』
『……レイフォンは魔法の原理を知っているかい?』
『何それ?』
『じゃあどうやってレイフォンは魔法を使ってるんだよ!』
『なんとなく?』
『…………神様のボクでもレイフォンのことがよくわからないよ』
『まっ、細かいことは気にするなよ神様』
『いや……細かくないからね?』
呆れたり驚いたりする神様に対してレイフォンはずっと冷静というか、のんびりとした口調だった。
そして
(ボクがレイフォンの願いを叶えた意味ってあったのかな?)
と思う神様であった。
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