Episode 31
いつもとは違う様子のアシュリーを他の勇者パーティメンバーは、ただ黙って傍観していた。
「レイはテスターの街にいるはずでしょ? なんで、どうして王都にいるのよ?」
「それが……神様から旅にでないかって誘われてな。アシュがこっちに旅立ってから一週間後に俺も旅に出たんだ」
嘘は言ってない。
「はっ? また神様なの? それに旅? 何も出来ないレイが? 旅?」
「なんか……いつものアシュりんじゃないみたい」
レイフォンに責めるようなアシュリーの姿と言葉にミミーほポツリと呟いた。
「あれだよ、あれ。アシュが頑張るなら俺も頑張ってみようと思ったんだよ」
「私が頑張るなら? そう……」
「旅をしてまだ、まもないけど俺はわかったんだよ。俺は本当に何も出来なくて何もわからないやつだったんだって。アシュの言う通りだった。だからアシュがテスターの街に帰ってくるまでに俺は変わろうと思ったんだよ」
「私の為……」
「ただ待ってるだけの男ってのもカッコ悪いだろ?」
レイフォンはアシュリーにニコッとした表情を見せた。
「……レイのくせに」
顔をふせ少し嬉しそうな表情を見せるアシュリー。
「アシュリー? そろそろ彼が誰なのか僕たちにも紹介してくれないかな?」
言葉をかけたのはレオン。
レオンはレイフォンが気になってしょうがなかったのだ。
いつもとは違うアシュリー。
責めているようにも怒ってるようにも見えた、だがどこか嬉しそうな表情に見えるアシュリー。
自分には見せない表情。
それにアシュリーのことを普通に「アシュ」と呼ぶ事にも気になっていたレオン。
「す、すみません勇者様」
「ち、違うんだ。僕は別にアシュリーを責めてるわけじゃなくてだね……」
頭を下げて謝るアシュリーに焦るレオン。
「レオンが言う通り責めてないから謝らなくてもいいいだよアシュりん。それで彼は?」
「あっうん。私の暮らしていたテスターの街での幼馴染みで名前はレイフォン。私のひとつ年下で……さっきは訂正できなくて"弟"って言ってしまったけど、私の弟みたいなものなんです」
「弟じゃない……幼馴染み……男」
アシュリーからレイフォンの紹介をされて、ぶつぶつと小さく呟くレオン。
「落ち着けレオン」
「だ、大丈夫だ」
レオンを宥めるマット。
「あっ、こんばんは。はじめましてレイフォンです」
軽く挨拶して名前を名乗ったレイフォンに対して他の勇者パーティメンバーも挨拶をして名前を名乗っていった。
そして
「アシュりんは私達のことは気にしないで、久しぶりに再会した幼馴染み君とふたりでお話ししてきなよ」
「ふたりでだと!?……う、羨ましい……うっ!?」
レオンの口を押さえるマット。
「ああ。ミミーの言う通りだ。俺達のことは気にしないでいいからなアシュリー」
「……ありがとう」
アシュリーはお礼を述べたあと、レイフォンとカウンターの席へと向かったて行った。
ーー
「アシュリー……」
「落ち着け、そして空気を読め勇者様」
「アシュリー……」
アシュリーの後ろ姿を目で追い名前を呟き続ける勇者レオンであった。
「アシュリー……」
「「しつこい!」」
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