Episode 28
朝の訓練を終えて水を浴びたあとに城に用意された自分の部屋へと歩いて向かっていたアシュリー。
「アシュりん、おっはよー!」
うしろから元気にアシュリーに挨拶の声をかけたのは、勇者パーティメンバーのひとりの少女
ミミー・クロッサム
「おはようミミー」
「アシュりんのお部屋にお邪魔してもいいかな?」
「ええ、いいわよ」
ーー
アシュリーの部屋。
「うわー! アシュりんのお部屋は相変わらず整理整頓されてきれいだね」
「普通よ。ミミーがちゃんと部屋の片付けをしないだけでしょ?」
「だって……」
ベットにダイブしたあとにアシュリーの部屋を見渡し言ったミミーの言葉にアシュリーは呆れて返した。
ミミーは家事掃除が苦手なのである。
「そ、そういえばレオンがアシュりんが名前で呼んでくれないとか普通に話してくれないとか愚痴ってたわよ」
話題を変えるミミー。
その話に出てきたレオンという人物。
レオン・アインヘルム
勇者の名前だ。
アシュリーはミミーと同じくもうひとりの勇者パーティメンバーの青年
マット・シュラム
に対しては普通に名前で呼び、話しをていた。
しかし勇者レオンに対してだけは「勇者様」と呼び敬語で話していたのだ。
「勇者様は勇者様だから」
「ふ~ん。てゆうかレオンは絶対にアシュりんのことが好きだよね」
「あははは……そんなわけないよ」
ミミーの言葉にアシュリーは笑って誤魔化した。
アシュリーもうすうすは感じていた。
まわりから見ればまるわかりなのだが、勇者レオンはアシュリーに一目惚れし好意を抱いていた。
積極的にアシュリーに話しかける勇者の姿と表情を見ればまるわかりだった。
「アシュリーは美人だし、スタイルも良いし、魔法の才能だって凄いし……私にもよこせ!」
「キャッ!」
ミミーは飛びつきアシュリーの豊かな胸をわし掴みにした。
「また膨らんでるし……」
「き、急に何をするのよ! ミミー!」
自分の貧しい胸を触るミミーと自分の胸を両腕で守るような仕草のアシュリー。
ミミーは小柄でいわゆる子供体系だった。
「私の胸を返してよ! アシュりん!」
明らかな言いがかりである。
「言ってる意味がわからないわ……ほら、ミミーは成長期なんだから大丈夫よ」
「知ってたアシュりん? 私ねアシュりんよりひとつ年上なんだよ?」
そうえば、と思ったアシュリー。
「け、けどね、成長期なのはかわらないんだし、ね?」
なぜ私はミミーのフォローをしているのだろうと思うアシュリー。
「……私ね、お母さんにも三年ぐらい前に「あなたは成長期なんだから」って言われたんだよね……成長って何だろうね……」
いつの間に移動したのか、ミミーは窓際に立ち遠くの外をなんとも言えない表情で眺めていた。
「あははは……」
なんと返せば良いのか困ったアシュリーは、ただ苦笑いをする事しか出来なかったのであった。
お読み頂きありがとうございました。