表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/198

Episode 26

 ルンが魔人化から元の姿に戻ってから二日後。


「レイ兄さん、何から何まで本当にありがとう」


「気にするな。アイラとルンは俺の家族で妹になったんだろ?」


「……うん」


 照れて嬉しそうな表情のアイラ。


 アイラとルンの姉妹ふたりは真新しい服を着ていた。


 その横には大きな荷物。


 ふたりは今日、ベロアの街からテスターの街へと旅立つのだ。


 そしてレイフォンも今日、ベロアの街を旅立つ。


「レイお兄ちゃんはいっしょじゃないの?」


「俺はまだ旅を続けないといけないんだ。けど心配するな。テスターの街の人達はきっとお前達を優しく向かい受けてくれるからな」


 寂しそうな表情のルンの頭を優しく撫でるレイフォン。


「わかった! わたしはアイラお姉ちゃんといっしょにおるすばんしてレイお兄ちゃんの帰りを待ってるね」


「そうしてくれ」


 元気に返事したルンとレイフォンの表情は笑顔だ。


 アイラはそれを優しい表情で見ていた。


「アイラ? 手紙は持ってるな?」


「うん」


 レイフォンがテスターの街の領主 アスラ・テンペリス伯爵とギルド受付担当職員ミリアに宛てた「アイラとルンをよろしく」との内容の手紙である。


「どちらでもいいからテスターの街に着いたら手紙を見せろよ」


「わかったレイ兄さん」



 ーーそして、レイフォンが手配していた馬車がやって来てアイラとルンふたりは馬車に乗り込む。


「レイ兄さん本当にありがとう! そして、帰りを待ってるからね!」


「レイお兄ちゃん待ってるよ!」


 動き出した馬車から身をのりだしレイフォンに大きく手を振るふたり。


 レイフォンは軽く手を上げてふたりを見送った。


 ーー


「さてと……俺もそろそろ旅立つかな……」


 馬車が見えなくなったあと、レイフォンはぽつりと呟いた。


 そんなレイフォンに姿を消して黙って傍観していた神様が話しかけた。


『そうだね。次はレイフォンはどうするんだい?』


『適当に近くの街からまわってみるさ』


『レイフォンはこの街で何かを感じたかい?』


『そうだな……』


 神様の言葉に考える仕草を見せるレイフォン。


『魔族も人間も自分勝手だなって感じた』


『そうだね……』


『あとは、やっぱりテスターの街は改めて最高の街だったともな』


 他にも感じることのあったレイフォンだが、今は上手く言葉にすることができなかった。


『レイフォン? 君なら魔王だって簡単に倒せるとボクは思うんだよね』


『俺が世界最強だからか?』


『まっ……そうだね。君は今までボクが見てきた誰よりも最強だと思うんだよ』


 おそらく、叶えた世界最強の願いを関係なしにしてもだ。


 と神様は思ったが、それは言わなかった。


『最強ですけどなにか?』


『えっ?』


『実際のところは世界最強とか言われても俺はピンとこないんだよ。つか、世界最強ってなんだ? 強さか? それだって俺にはピンとこない。それと……俺は魔王は倒さない。それは勇者やアシュの仕事だ』


『確かにね……』


『今の俺はとりあえずは旅を続けて自分の目で世界の状況を確認するだけだ。どうするかはその時次第で考えるさ』


『今回みたいにかい?』


『……そうだな』


 少し苦い表情を見せて頷いたレイフォンだった。




 それからーー


 レイフォンと神様はベロアの街を旅立った。


 


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ