Episode 24
白いフード姿に目元を隠す白い仮面。
これを考案したのは神様である。
「俺は宿屋に案内されたお兄さんでは決してない」
「そう、なの?」
首を傾げるアイラ。
「俺の名前は……え~っと……」
『神様の使者ホワイトマン』
「俺の名前は神様の使者ホワイト……って! 何だよ! そのダサい名前は!」
「お兄、さん?」
神様の存在を知らないアイラから見るとレイフォンは自分の言葉に自分でつっこむ変わった人に見えるのだろう。
アイラは不思議そうな顔をしている。
『え~、カッコいいと思ったんだけどな』
「……まぁ、なんだ……アイラの言う通りで、俺は宿屋に案内されたお兄さんだ」
あっさり正体を認めたレイフォン。
「やっぱり。声でわかったもん」
「そうか」
「事情があって正体を隠しているんだよね?」
察しの良いアイラ。
「ああ」
「それに私はお兄さんの名前は知らないしね」
「そうだっな。俺は宿屋の女将さんに聞いてアイラの名前を知ってたからな。俺の名前はレイフォンだ」
「レイフォンさんか……あの? レイフォンさんが私とルン、妹を助けてくれたんですよね?」
改めて尋ねるアイラ。
「まあな」
「それで……」
眠っているルンを見るアイラ。
「大丈夫だ。アイラの妹はもう魔人化はしないし、じきに目を覚ますだろう。それに……」
「良かったぁ~。あと、それにって?」
少し不安そうだった表情から安堵した表情に変わるアイラ。
「それにアイラの妹は目が見えないみたいだったから治しといた」
「えっ!?」
「駄目だったか?」
「いや、全然そうじゃなくて……その……どうやって?……あと……その……」
レイフォンの言葉に驚いたあと、申し訳なさそうにするアイラ。
「うん? 魔法で」
「魔法? あの、私……そんなにお金が無くて……いたっ!」
アイラの額に軽くデコピンをしたレイフォン。
「金なんか取らねぇよ。俺のことさえ黙ってくれてればそれでいいから。今言った俺が魔法を使ったってことも含めてな」
「でも……いたっ!」
再びレイフォンはアイラにデコピンをした。
「でもじゃねぇよ。子供は大人しく甘えてればいいんだよ」
『レイフォンもまだ子供だけどね……』
(うるせー)
アイラは額を両手で押さえている。
「……とにかくだ。気にするな、いいな?」
「はい……」
ーーそれから、レイフォンはもうバレたからと開き直り変装を解いていた。
「あの……」
「次はなんだ?」
「私、冒険者の人に……」
「ああ……そうだったな。それも心配するなあいつらにはお前達姉妹の記憶は消し(改ざん)といたから」
「え?」
(記憶を消した?)
「あっ、けどアイラには記憶があるんだよな……どうしたものか……」
アイラはまるで簡単に記憶を消したと言ったレイフォンに反応したのだが、レイフォンは勘違いして違うことを考えていた。
「そうだ! 流石に自分を殺そうとした奴のいる街じゃ暮らしにくいよな。ほらっ」
「えっ? 鍵?」
レイフォンはある鍵をアイラに手渡す。
「これは俺の家の鍵だ。お前達姉妹はこのベロアの街から離れてテスターの街の俺の家にでも住め」
「えっ?」
レイフォンのいきなりの提案にまったく状況がつかめないアイラであった。
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