Episode 23
「人間殺す、人間喰う、人間殺す、人間喰う……」
「物騒なことを言ってるわりには襲ってくる気配が本当にないな」
「おそらくは魔人化したばかりなんだろうね。だから赤ちゃんみたいなものだよ。時間が経てば人間を襲うだろうね」
「なるほどな」
神様の話に納得して頷いたあと、考える仕草を見せたレイフォン。
「レイフォンはこの魔人をどうする気なんだい?」
「戻す」
「……どうやって?」
時の魔法を使ってかい? との意味も込められた神様の問いかけ。
「とりあえずはーー眠れ」
右腕を魔人化したルンに突きだし手を広げるレイフォン。
すると、魔人化したルンは目を瞑りドサっと地面に倒れた。
「まずは魔人化した原因だな」
魔人化したルンの体に右手をかざすレイフォン。
神様は黙って様子を見ている。
「なるほどな……ほうほう……魔族の血液か……なら、この魔族の血液だけを取り除けば良いんだな」
原因がわかったレイフォンは、すぐに魔人化した原因と思われる魔族の血液を取り除くことにした。
アイラの時と同様に魔人化したルンの体も光に包まれ、みるみると元の人間の少女の姿に戻るルン。
「はい、終わり」
かかった時間はわずか三分。
「もう……終わったのかい?」
「ああ、目が見えないみたいだったからついでに治しといた」
「……そうなんだ」
今回は「時の魔法」ではなかったみたいだがレイフォンの魔法を目の当たりした神様は、レイフォンの規格外さを感じていた。
(あれ? ボクがレイフォンに叶えた世界最強の願いってどうレイフォンに影響しているのだろう?)
レイフォンが世界最強になったのは確かだった。
しかし、どのように世界最強になったのかは神様もわからない。
わかっているのは先程からレイフォンが使っている魔法は願いとは関係ないということだけである。
「世界最強だっけ? その影響かは知らないけど魔法を使っても全然疲れないや」
(まさか? 魔力に影響しているのかな?)
「お~い神様? 神様?」
「えっ? どうしたのレイフォン?」
「どうしたのはこっちのセリフだ。さっきからぼーっとして」
「いや、ちょっと考え事をね……」
「ふ~ん」
とりあえずは考えることを保留することにした神様。
「さて……ふたりをこのままにするわけにもいかないな」
「そうだね」
にこやかな表情で眠るアイラとルンのふたりの姉妹の姿を見るレイフォンと神様。
その時ーー
「……うっ……うん? ……あれ?」
アイラが目覚めた。
「私の左腕がある? ……あれ? ……けど確か私は……」
少し寝ぼけているアイラ。
「大丈夫だ。全て終わったから安心しろ」
「そうだ! ルンが、私の妹が魔族になって! それで……それで……」
思い出したかのように立ち上がり騒ぎだすアイラ。
「落ち着けアイラ。お前の妹も無事だ。下を見てみろよ」
「えっ?」
白いフードと白い仮面姿で正体を隠しているレイフォンを見たあとに、言われた通りに下をみたアイラ。
「……ルン」
「なっ?」
元の姿に戻り、にこやかに眠る大切な妹ルンを確認したアイラは安堵した表情を見せた。
そして、アイラは泣いていた。
悲しい涙ではなく嬉し涙である。
「……ありがとう」
「気にするな。つか遅れて悪かったな」
どの様にして自分の左腕が治り、ルンが元の姿に戻ったのかはわからないけど、アイラには誰が助けてくれたのかは、なんとなくわかり感じていた。
アイラはレイフォンに対して首を振った後に再度言葉にした。
「ありがとう……宿屋に案内したお兄さん」
「あれ?」
『バレてるみたいだねレイフォン?』
アイラには何故か正体がバレていたレイフォンであった。
神様はアイラが目覚める直前に姿を消していた。
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