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Episode 21

「人間殺す、人間喰う、人間殺す、人間喰う……」


 魔人化したルンは集まった冒険者達に囲まれていた。


「魔族っていっても本当にガキじゃねぇか?」


「さっきからぶつぶつと何か言ってるしな」


「襲ってもこねぇし、これって楽に終わるんじゃないか?」


「だな」


 立ち止まって呟き続け襲ってくる気配のない魔人化したルン。


 そんなルンに冒険者達は余裕そうな表情を見せていた。


「人間殺す、人間喰う、人間殺す、人間喰う……」


「こいつは、これしか言えないのか、よっ!」


 ひとりの冒険者が余裕の笑みを浮かべて魔人化したルンに剣を振りかざした。


 その瞬間ーー


「やめて!!」


 少女が飛び出してき


 ザシュッ


 振り下ろされた剣は魔神化したルンではなく少女、アイラの左腕を切り落としていた。


「ぐっ!!」


 アイラは切り落とされた左肩部分を右手で押さえながら苦痛の表情を浮かべていた。


 それでもアイラは痛みに耐えて魔人化したルンと冒険者の間に立ち続ける。


「お、俺は悪くないからな! 急に飛び出してきたお前が悪いんだからな!」


 動揺を見せる冒険者。


 まさか、少女が急に飛び出してくるとは思わなかった。


「ど、どうすんだよ?」


「何で誰も止めなかったんだよ!」


「魔族に集中してたんだからしょうがないだろ!」


「と、とにかく俺は悪くないからな!」


 まわりの冒険者達も動揺していた。


「お願いです……ルンを……私の妹を殺さないでください……この子は人間なん……です」


 アイラの息づかいは荒く顔色は悪い。


「妹? 人間?」


「な、何言ってるだ?」


「そうか!」


「どうしたんだ?」


「このガキも魔族なんだよ! だからまとめて殺せばいいんだ! 言ってただろ? "妹"だってな」


「けど……」


「なら、その魔族に殺されたことにでもすればいいんだよ。どっちにしろ、あの傷じゃ助からない」


「だな……」


 動揺から一転してアイラもまとめて殺してしまう事を決めた冒険者達。


「そう言う事でお前も"魔族"だ。だから俺は悪くない」


 アイラの左腕を切り落とした冒険者は開き直りを見せ口をニヤリとさせていた。


 大量の血を流し続けるアイラは目は虚ろ。


 冒険者に言葉を返そうにも、もう話す気力が残っていなかった。


 魔人化したルンは「人間殺す、人間喰う」と呟きながら状況をずっと眺めていた。


「……まずはお前から楽にしてやるよ。そのあとにすぐにお前の"妹"も同じ所におくってやるからな」


 そう言ってから、冒険者は躊躇なくアイラに剣を振りかざした。




(ごめんねルン……私にはやっぱりどうすることも出来なかったよ……こんなお姉ちゃんで本当にごめんね……)


 アイラは心の中で思い、振りかざされた剣を虚ろな目で見たあとに諦めた様に目を閉じた。



 降り下ろされる剣ーー


 しかし


 何も起こらない。


 アイラは不思議に思い、ゆっくりと目を開けた。



 すると



 剣は、白いフードを深く被り、チラッと見える目元部分からは白い仮面を覗かせる人物の左手により受けとめられていた。


(誰?)


 アイラはそれを確認すると、膝から崩れて倒れこみ意識を失った。


 流石に限界だったのだろう。


 アイラが倒れ意識を失ったことを確認した剣を受けとめる白いフード姿の人物は、低い声で冒険者に声をかけた。


「何、こんな女の子を殺そうとしてんだよ? あんたは?」




お読み頂きありがとうございました。

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