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Episode 20

 アイラは走っていた。


 いや……必死に逃げていた。


「はぁー はぁー はぁー……」


 うしろを振り返り魔人化したルンが追いかけて来てない事を確認したアイラは、両手両膝を地面に着けて切らした息を吐いていた。


 アイラのは混乱していた。


 ルンの目が見えたと喜んでいたら突然苦しみだし倒れた。


 ルンは顔を上げてアイラに「逃げて」と言った。


 姿が変わる直前には「バイバイ」と笑ったような表情を見せたルン。


 その言葉を最後にルンは別人……違う『人間』ではない姿へと変わってしまった。


 そして……混乱し動揺していたアイラはルンではない魔人化したルンに恐怖して逃げ出したのだ。


「……私は逃げてどうするの? ……ルンはどうなっちゃたの? ……私はどうすればいいの?」


 アイラの目からは涙がこぼれていた。


 妹のルンの姿が変わってしまった事。


 ルンを置いて逃げ出してしまった事。


 どうすればいいのかわらない自分。


「そ、そうだ」


 アイラは街の警備隊に助けを求める事を思いつく。


 しかし


「……駄目。ルンが殺されちゃう……」


 ルンの姿はもう人間とは呼べない。


 子供のアイラが説明したところで誰が信じてくれるのだろうか?


 あれは人間でアイラの妹だと。


 それに……貧民地区に住む子供達は街の人達にはあまり好かれてはいなかった。



 アイラが考えこんでいる時だったーー


「ほら! 急ぐぞ!」


「まじかよ? 魔族が現れたって?」


「まじだって、しかも子供の魔族だってさ」


「子供?」


「ああ。貧民地区の方から今、街の中央にゆっくり歩いて来ているらしい」


「けど大丈夫なのか?」


「大丈夫だって、魔族っていっても子供だ。それに、魔族を殺れば褒賞金が出るからな」


 アイラの横を通る男性冒険者の話し声。


「え? ま、待って! その子は魔族じゃないの!」


 話を聞いてしまったアイラはひとりの冒険者の足にすがり付いた。


「離せ! 汚ねぇガキが!」


「キャッ!」


「ほら、行こうぜ」


 アイラを掴み投げ飛ばした冒険者はそう言って倒れたアイラを気にすることなく去っていった。


「ぐすっ…………ごめんねルン。私、お姉ちゃんなのに何も出来なくて……」


 アイラは再び涙し、倒れたまま呟いた。



 そしてーー


 泥だらけになってしまったアイラは決意したような目で立ち上がり冒険者の向かった方向へと走り出した。


「ルンは……私の妹は殺させない……」


 ルンの姿が変わった事なんてどうでもよかった。


 今はただ、ルンを殺されたくない一心のアイラであった。


「……私はルンのお姉ちゃんなんだから」




お読み頂きありがとうございました。

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