Episode 196
クスクスと小さく笑うアシュリーにレイフォンは尋ねる。
「でしょうねって、どういうことだよ?」
「レイを見てておかしかったからよ」
怪訝な表情を見せるレイフォンにアシュリーはそう答えた。
「は? 意味わかんねぇ……」
「はじめから私はレイには期待なんてしてなかったのよ」
「ん? なんだそれ?」
(期待? なにそれ?)
アシュリーが何を言いたいのかわからないレイフォン。
「だって、レイがデートのプランなんて考えれるわけないし、エスコートなんて出来るわけないでしょ? レイってそういうの考えるのは昔から苦手というか、面倒がってたじゃない」
アシュリーの言葉にレイフォンは否定出来ない。
「……否定はしない。なら、満足させろだの、減点だのどうのこうのってのはなんだったんたんだよ?」
訝しむ表情を浮かべるレイフォンに、アシュリーは簡単に理由を浮かべる。
「あ、それね。それは昨日のレイの態度がムカついたのと、今日の待ち合わせに堂々と遅刻してきたからよ」
(遅刻はわかるけど、昨日の態度って何だ?)
レイフォンの疑問に答えるかのように、アシュリーは話を続ける。
「ミリベアス経由で関係うんぬんの話を聞かされたのはあまりいい気分ではなかったわ。でも、それはもういいの。昨日も言ったけど、どうせレイがミリベアスの口車に乗せらたってそんなオチなんだろうし……。私がムカついたのはそのあとよ」
「そのあと?」
(何かあったか?)
心当たりがまったくないレイフォン。
「レイはなんでもするって言ったわよね?」
「ああ、だからそれがデートすることなんだろ?」
「そうね。でも、その時の私は顔には出してなかったけど、内心ではちょっとだけ言うのが恥ずかしかったのよ……。それなのにレイはマヌケ顔して「え? それだけ?」って言ってきたのよ。普通にムカついたわ」
アシュリーのムカついた理由に
(……え、そんな細かいことで?)
と、思ったレイフォン。
「……今、そんな細かいことでとか思ったでしょ?」
少し睨むような目でレイフォンを見たアシュリー。
「……いや、まぁ……うん、思った。けど、昨日のアシュはまじで怒ってるような雰囲気だったし、デートとか言われても浮かれるような状況じゃなかっただろ? てっきり、なんつーのか、生死に関わる何かをさせられるかと思ってたから……」
「何よそれ……」
正直に答えるレイフォンにアシュリーは呆れた様子を見せ呟いた。
「とにかく……昨日のその時のレイの態度がムカついたから、満足させることなんて付け加えてやったのよ。ま……期待ははじめからしてなかったけど、いきなりの遅刻だものね……はぁ……」
そう言って小さな溜息をついたアシュリー。
「だから嫌がらせで俺が聞いてなかった点数方式なんてもんを付け足したと?」
「嫌がらせじゃないわよ! その時に思い着いたペナルティよ」
「何だよそれ……俺はてっきりミリベアスに吹き込まれたもんかと思ってたけど違ったんだな」
「何言ってんのよ? 違うわよ? まっ、もういいわ。点数でみたらレイは失格だけど、さっきのお店でのレイは面白かったから許してあげるわ」
「面白かったから許すって何それ……」
「失格したのに許してあげるんだからいいでしょ? それよりも、ここからは私が行きたいとこに行くわよ。レイは黙って付いてくること。それでいいわね?」
ひとまず、アシュリーが怒ってる様子も、不機嫌な様子もない。
「……よくわかんねぇけどわかった」
なので、レイフォンはそう答えて頷いた。
「それじゃ、行くわよ」
ベンチから立ち上がりそう言ってきたアシュリーにレイフォンは
「へいへい……」
と、返事をし同じく立ち上がり、ふたりは街中へと向かいデートを再開させるのであった。
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