Episode 195
内容はともあれ、とりあえずアシュリーに絡んで来ていたガラの悪い男性3人組を追い払うことには成功したレイフォン。
男性のひとりが脅しに使っていたナイフ(ミスリル製)を素手でへし折って……。
男性達が逃げ去ったあと、レイフォンは注目を浴び、客達に色々と声をかけられた。
3人組を追い払ったことへの拍手。
連れであると思われているアシュリーを助けたことへの称賛。
ナイフが本当にミスリル製だったのか問われたりなどなど……。
もちろんレイフォンは「そんなわけないじゃないですか……ただのナイフでしたよ」と、苦笑い混じりに否定した。
ナイフは男性達が持ち逃げ、実物は残されていない。
普通に考えてミスリル製のナイフを素手でへし折る人間など存在しない。
そのため、レイフォンが本当にミスリル製のナイフをへし折ったなどと、客達の中に鵜呑みにする者はいなかった。
若干1名だけは違ったが……。
――――
注目は浴びってしまったが、なんとか
ナイフ(ミスリル製)のことは誤魔化かすことが出来たレイフォンはすぐにアシュリーと共に店を後にしていた。
広場のベンチに座りげんなりした表情を見せるレイフォン。
レイフォンの隣にはアシュリーがニコニコした表情で座っている。
「疲れた……」
「ナイフのこと誤魔化せてよかったわね」
「は?」
「レイが素手でポキッて折っちゃったナイフのことよ。あれって本物のミスリル製のナイフだったんでしょ?」
あの中で唯一、アシュリーだけが本物のミスリル製ナイフだとわかっていた。
「正直わかんね。ミスリルなんて、名前しか聞いたことなかったし、実物は見たことなかったし……。まっ、あいつらのあの大袈裟な様子からすると本物だったかも知れないけどな……。でもなんだ……ひとまずは変な注目だけは受けなくて助かった。つか、何でアシュはさっきからニコニコした顔してんだよ?」
「内容はともあれ、レイが私のことを助けたくれたでしょ? だからよ」
「いや、あれはただの茶番だろ。アシュだけでなんとか出来たはずだろ。つか、俺が気になったのはお前のあの気持ち悪い演技で……」
「お前? 気持ち悪い演技?」
笑顔のアシュリーだが、目は笑っていない。
そんなアシュリーに気づき、レイフォンは
「……なんでもないですごめんなさいアシュリー様」
すぐ様(棒読みで)謝った。
「まっいいわ……。それで? このあとはどこに連れて行ってくれるのかしら?」
小さな溜息をついたあと、アシュリーは尋ねた。
「どこに……? え?」
「まさか、何も考えていなかったなんて言わないでしょうね?」
何も考えてなさそうな顔のレイフォンにアシュリーはジト目を向ける。
図星のレイフォンは目を泳がせる。
元々、デートのプランなど何も考えて来てはいなかったレイフォンは、とりあえず食事をしながら考える予定だった。
だが、あの状況で考える余裕もあるはずもなく……。
そして
「あ……えっと、悪いアシュ……このあとのことは何も考えてない」
レイフォンは正直に答えて謝った。
すると何故かアシュリーはおかしそうにクスクスと小さく笑っていた。
「ふふっ……でしょうね」
はじめから知っていた、そんな表情を見せるアシュリーを見てレイフォンは不思議そうに首を傾げるのであった。
「は……?」
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