Episode 190
中心街大通り広場。
今日は約束通り、レイフォンとアシュリーのデートの日。
ふたりは一緒に家を出るのではなく、待ち合わせをしていた。
「悪い遅くなった」
待ち合わせ場所の噴水前に遅れて現れたレイフォン。
「減点2点よ。デートだって言ったわよね? それなのに遅れるってどういうことなのよ」
少しだけご立腹の様子のアシュリー。
「いや、本当にすまん」
「残り8点よ。今日はレイが私を満足させてくれるデートのはずよね? 100点以上を超えないと満足したとは認めてあげないんだからね。わかってるの?」
先ほどから何やら点数的なものをアシュリーは言っているが、レイフォンには心当たりがなかった。
(……何? その点数方式? 2点減点で残り8点ってことは、元々の持ち点数は10点だったのか。つか、100点以上って厳しくないか? そもそも、俺はそんなのひとことも聞いてねぇ……)
「あの、アシュ?」
「何よ?」
レイフォンは点数方式のことについて、ひとこと言ってやるつもりだった。
しかし
(いや、ちょっと待て。ここで俺がアシュに、そんな話なんて聞いてないと言ったところで、たぶん減点されるのがオチだ。理不尽だけど、ここは我慢だ……)
冷静になり、状況を考え判断したレイフォンは、言うのを中断した。
「あ、いや、その……そのいつもとは違う髪型も似合ってるな。その白い服も似合ってる。なんつ〜の、アシュが女の子っぽく見える」
アシュリーの今日の髪型はポニーテール。
服装は白いワンピース。
減点回避の為、レイフォンはいつもとは違う、アシュリーの見た目を褒めることを選んだ。
それなのに……。
「……減点1」
まさかの減点。
「えっ? なんで?」
予想外の減点にレイフォンは、すぐに聞き返した。
(俺今、褒めたよな?)
点数が増えるならまだしも、減点の要素はないはずだと、レイフォンは思っていた。
そんなレイフォンの疑問に答えるかのように、ゆっくりとアシュリーの口が開いた。
「褒めてくれたのは嬉しいわ。でも、最後のひとことが余計よ」
最後のひとこととは"女の子っぽく見える"である。
「余計なひとことさえなければ2点増やしてあげてもよかったのに。残念だったわねレイ。レイは私のことをちゃんと満足させる気があるの?」
(なんだよそれ! そんな細かいことまで気にして喋れるかよ!)
と、心の中では思いながらも、言葉では
「そ、そうか。す、すまなかった。これからは気をつけて頑張ります……」
と、無理やりの作り笑顔で愛想笑いを見せるレイフォンであった。
(ははは……100点以上とかマジ無理……)
――その頃、ジャリック国境付近。
「や、やっと戻って来たぞ……」
そこには、痩せこけたとある青年の姿があった。
「待っていてください、女王様……」
色々と忘れられていた人物。
東の勇者カルカである。
ここで登場したからといって、このあとまた登場するのかは不明である。
お読み頂きありがとうございました。
10月21日にホビージャパン様のHJノベルスよりこの作品の書籍化が発売されます。
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