表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/198

Episode 188

 城の訓練場から帰宅したレイフォンとアシュリー。


「おかえりなさい! レイフォンさん、アシュリー!」


 出迎え、一番に声をかけてきたのはマリベルである。


「ただいま、マリベル。遅くなってごめんなさい」


「いえ、気にしないでください。じゃあ、私はご飯の用意をしますね」


「うん、ありがとう」


 アシュリーとの短いやりとり後に、マリベルは台所へと向かって行った。


 アシュリーとレイフォンが食卓部屋に入ると、そこにはテーブルの席に座っている、ミリベアスと神様(幼女)の姿があった。


 ミリベアスは優雅にワインを飲んでおり、神様はテーブルに顔を着けてもたれ掛かっている状態だった。


「あら、おかえり」


「ただいま、ミリベアス、神様。遅くなってごめんなさい」


「わたくしは平気よ、これを飲んでいたから」


 中身の入ったワイングラスを片手で持ち上げ見せたミリベアス。


「おかえり、ふたりとも。ボクはお腹がペコペコリンの限界だったよ」


 そう言ったのは神様。


「ごめんなさい……」


 神様がお腹を空かせているのは本当だが、別に責めてるつもりではなかった。


 しかし、アシュリーは申し訳無そうに、真面目に謝罪をしていた。


「あ、いや……そんな真面目に謝られても……あ、えと……冗談だから! 気にしなくていいからねアシュリー」


「え? あ、はい……ありがとうございます」


 それから間もなくして、マリベルが料理を運んで来て食事がはじまった。


 料理はマリベルの手作り……ではない。


 街で購入した料理を温めただけである。


 レイフォン一行の女性3人は、共に料理を作るのが苦手であった。


 貴族令嬢にお姫様ふたり。


 仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。


 そして、そうこうしているうちに食事は終わったのであった。


 そういえば、ひとりだけまだ声を発していない人物がいるのにはお気づきであろうか?


 その人物とはレイフォンの事である。


 レイフォンは訓練場からの帰り道から、ずっと考え事をしていた。


(嘘偽りなく誤魔化さずに……嘘偽りなく誤魔化さずに……)


 アシュリーに嘘偽りなく誤魔化さずに、どのように今日の(魔王との)出来事を話せばいいのかを考えていた。


(魔王って事は絶対に話せないだろ……。ミリベアスのお腹にいる子供の事は……いや、これは明らかな嘘だから問題はない。なら、やっぱり問題となるのは、魔王が俺とミリベアスの仲を認めたってとこだよな……)


 多少の誤解もあるが、魔王がふたりの関係を認めたのは事実である。


(そもそも、あれはミリベアスが一方的に言い出した事で、俺には非はない。つか、俺はミリベアスとどうこうなりたいなんて思った事がないしな。やっぱり、ここだけは正直に話すか。ついさっき、アシュには改めて俺の気持ちも伝えたわけだし、今の流れならアシュもわかってくれるはずだ。よしっ!)


 話すべき部分は正直に話す。


 そう、レイフォンが気持ちを固め、アシュリーに話そうと声をかけようとした、その時だった。


「あ……アシュ? 話が……」


 あるんだけど、レイフォンはそう声をかけるつもりだった。


 しかし


「えっ!? ミリベアスのお父様がレイフォンさんとの関係を認めたんですか!」


 聞こえてきたのはマリベルのそんな、驚いたような大きな声だった。


 話しているのは、ほろ酔いの様子のミリベアス。


 ミリベアスの話しを聞いているのはマリベルだけではない。


 テーブル席には3人の少女が集まり座っていた。


 最後のひとりはもちろん、アシュリーである。


「……」


 驚いても、怒っても、笑ってもないアシュリーの表情。


 完全無言の無表情。


 レイフォンはそんなアシュリーの表情を見て、寒気を感じたのであった。


(帰りたい……)

お読み頂きありがとうございました。

恐縮ながら、お知らせさせて頂きます。

この作品の書籍化が決定致しました。

10月21日にホビージャパン様のHJノベルスより発売されます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ