Episode 186
個人的な事情により内容変更致しました。
前Episode186をお読み頂いた皆様、申し訳御座いません。
「はぁ……」
訓練場にはひとり残るアシュリーは溜息を漏らしていた。
「明後日か……」
アシュリーがレオンの父親と会う日は明後日。
「確か、勇者様のご実家は伯爵家だったわよね」
レオンはアインヘルム伯爵家の長男。
ちなみに勇者パーティーメンバーは全員が貴族。
ミミーはクロッサム子爵家の長女であり、マットはシュラム男爵家の三男。
アシュリー以外の3人には兄弟や姉妹が存在している。
「レイに私が勇者様のお父様に会う事を伝えたら、どう思うのかしら……。少しくらい嫉妬してくれるかしら? でも、レイの事だから「そっか、わかった」って普通に言いそうなのよね。レイがミリベアスのお父様に会うって聞いた時は、私は少しモヤモヤした気持ちになったのに」
もしも、自分が他の男性の親に会うと伝えたらレイフォンがどのような反応を見せるのか。
アシュリーはレイフォンの反応が気になっていた。
嫉妬するのか? 嫉妬しないのか?
「レイは今頃はミリベアスのお父様に会ってるのかしら?」
レイフォンが今何をしているのか考えるアシュリー。
「それなら、もう済んだぞ」
「そう…済んだのね……って、え?」
アシュリー以外は誰もいないはずなの訓練場。
ひとり言に対し返ってきた声。
アシュリーはゆっくりと横を振り向いた。
すると、そこには右手を軽く上げ、平然とした表情のレイフォンの姿があった。
「よっ、ミリベアスの父親とならもう会ってきた。ちょっと面倒くさかったけど、ひとまずは片付いた」
「……」
「どうしたアシュ?」
「……どうしてレイがいるの? というか、いつからいたの?」
「ん? アシュが溜息して、勇者の父親に会うとかどうとかひとりでぶつぶつ呟いていた辺りからだな」
「なっ!?」
(ほぼ全部聞いてるじゃない!)
ひとり言を聞かれていたと知ったアシュリーの顔は恥ずかしさで真赤。
「な、な、な、なんですぐに声をかけなかったのよ!」
動揺全開のアシュリー。
「いや、何か考え事してるみたいだったし、途中で声をかけるのは悪いかなって思ってな。声をかけるタイミングを見計ってた。つか、勇者の父親に会うのか?」
「あ、えっ?」
「会うんだろ?」
「……そ、そうよ。わ、悪い?」
動揺するあまり、何故か喧嘩腰の態度をとってしまうアシュリー。
「いや、別に。ただ、そんな事を言ってたから確認しただけだ」
「そう……それだけなの?」
「それだけって?」
「レイは何も思わないのって聞いてるのよ! 私のひとり言を聞いていたんでしょ!」
「俺が嫉妬するかどうかってやつか?」
「そ、そうよ……」
「う〜ん、嫉妬か……思ったより嫉妬は感じていないかもな俺」
「どうしてよ!」
嫉妬してないとのレイフォンの発言に、表情をムッとさせたアシュリー。
「どうしてと言われても困るけど、あえて言うなら……」
「あえて言うなら何よ?」
ムッとした表情を続けるアシュリーに対し、レイフォンが続けて放った言葉は、アシュリーが予想していなかった言葉だった。
「……アシュの事が好きだからだよ」
「……へ?」
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