Episode 183
魔王との戦いは一時間を経過していた。
戦いといっても魔王が一方的に攻撃を加え、それをレイフォンが防いだり避けたりの繰り返し。
レイフォンは防御に徹していた。
ドーン!
地面に空く巨大な穴。
魔王の攻撃により空いたものである。
「また、外したか…」
レイフォンに攻撃が当たらず悔しそうな魔王。
魔王の攻撃はまだ一度もまともにレイフォンには当たっていなかった。
(わざと当たって負けようかとも思ったけど、流石にあの攻撃をまともに食らうのはヤバイ。つか…まともに当たったら、たぶん死ぬ)
ひとまず、虚言を吐くミリベアスは後回しにして魔王をどうにかする事を優先する事に決めたレイフォン。
当初の予定はとにかく防御に徹して、防御だけで精一杯アピールをして、タイミングを見て魔王の攻撃に当たり負ける予定だった。
そしてーー流石は魔王様ですね! やっぱり俺なんかじゃ魔王様の相手にはならいっすよ。あはは。
とかなんとか言って早く戦いを終わらせ早々に魔国に帰ってもらうつもりだった。
ミリベアスの虚言もなんとなくうやむやにして。
だが、予定通りには行っていない。
ドーン!
ポッカリと穴の空いた山。
魔王の攻撃によるもの。
魔王の攻撃は魔法にしろ、素手にしろ強力だった。
(つか、派手に破壊しすぎだろ…。くそ…あんなのに当たるのは流石にごめんだ。なら、どうやって終わらせる…)
魔王に攻撃を加え倒し勝つとの選択肢はないレイフォン。
「我輩の攻撃をこうも避け続ける事は褒めてやろう。だが…つまらん。いい加減に貴様も我輩に攻撃をしてこい。見たところ、まだ体力も魔力も余裕があるように見えるが?」
「そ、そんな事はないですよ? もうそろそろ限界な感じです。はぁ、はぁ…」
慌て疲れたふりをするレイフォン。
「ほぉ…我輩にはそのようには見えんが?」
目を細め疑うような視線でレイフォンを見る魔王。
「いや、本当ですって…はぁ、はぁ〜…」
演技が下手なレイフォン。
どう見てもわざとらしい。
「ま…よい。部下達がそろそろここに気づいて駆けつけてくるはずであろう。ならば、次で最後としよう。かつて我輩が勇者と戦った際に使った魔法を貴様に放つ。それを貴様が防ぐ事が出来れば引き分けとし、我輩は大人しく城に帰ってやろう。だが…もしも貴様が防ぐ事が出来なければ……」
「で、出来なければ?」
「貴様はここで死ぬ。今から貴様に放つ魔法は小さな人間の国ならば簡単に滅ぼしてしまうであろうものだ」
「……」
(何言ってるのこの人…じゃなくて魔王…)
「時間がない。では、早速いく」
片手を広げ空に向かって上げる魔王。
広げた手の上に現れる黒い球体。
黒い球体はみるみる巨大化していく。
(…うん、デカすぎ…)
直径三十メートルほどの球体。
あとは魔王がレイフォンに向け黒い巨大な球体を放つだけ。
不気味な表情でニヤッと笑顔を見せる魔王。
まるで、レイフォンに対し、どうする? とでも言いたげな表情。
だが、レイフォンはこの時、別のどうでも言い事を頭に浮かべていたのであった。
久々に浮かんできた異世界知識によるどうでもいい知識によって。
(テレビ局の球体と同じくらいのサイズ? なんだそれ?)
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