Episode173
ジャリックの城でレイフォンが何やらやらかしてしまっていた頃。
マリベルと神様(幼女)はふたりで夕食をとっていた。
場所はジャリック首都中心街から少し離れた一軒の家。
レイフォン達がジャリック滞在期間中だけ借りた家である。
「神様ちゃんもだけどミリベアスも急にいなくなっちゃうんだから。って、神様ちゃん? どうしたの?」
食事中に難しそうな顔で考えるような仕草を見せる神様。
マリベルは気になり声をかけた。
「…いや、何でもないよマリベル。それよりこのスープおいしいね。マリベルが作ったのかい?」
神様は誤魔化すように答え話題を変えた。
首を傾げるマリベル。
「そう、ですか? ならいいですけど…。あと、その…このスープは買ってきたもので私の手作りじゃないです。自慢じゃないですけど、私は料理とかは苦手で…あはは」
苦笑うマリベル。
(そういえば、マリベルはお姫様だったね)
「そっか。ねぇ、マリベル? 君は魔族の事をどう思ってるんだい?」
神様からの唐突な質問。
「いきなりどうしたんですか? 魔族?」
「うん」
「魔族、ですか…」
魔族との言葉に一瞬だけ表情を暗くさせたマリベル。
「…私は魔族が嫌いです。恨んでいます、憎んでいます。私の大切な家族や国の人々の命を奪った魔族を……私は決して許しはしません」
当たり前と言えば当たり前の答え。
「そっか…そうだよね。ちなみにそれは全ての魔族に対してなのかい?」
「全ての魔族? 全てと言われると困りますけど。今は、そうですね…。魔族と言っても私達人間のように様々な性格を持っているかも知れません。悪い魔族ばかりではないかも知れません。だけど今の私には区別など出来るほどの感情の余裕はありません」
「だよね。ごめんねマリベル。もういいよ。変な事を聞いちゃってごめんね」
「いえ、大丈夫です。でも神様ちゃん? どうしていきなりそんな質問を?」
不思議そうな表情のマリベル。
神様はとある気配を感じていた。
人間とは違う気配。嫌な気配。
そして、ミリベアスにも似た気配を。
「えっと、何となくだよ、何となく。マリベルとこうやってふたりきりで話す機会なんてあまりないからね」
(おそらくこの気配は魔族のもの。ミリベアスとの関係者? この間のミリベアスの兄とは違う誰か。嫌な予感しかしないな…)
「神様ちゃん?」
再び考えるような仕草を見せていた神様に声をかけたマリベル。
「ごめん、何でもないよ。ほらマリベル、せっかくの温かいスープなんだから冷めないうちに食べちゃおう」
「え? あ、はい…」
マリベルは気になった。
しかし、深くは尋ねようとはしなかった。
ただ頷き黙って食事を再開した。
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