Episode 170
世界武道大会本戦が開催され行われる中立国ジャリック。
ジャリックの城では本戦出場する選手及び三大国各国の勇者などが集まりパーティーが執り行なわれていた。
立食形式のパーティー。
その一箇所に白いフード白い仮面姿ゼロとして変装し本戦出場予定のレイフォンの姿と同じく本戦出場予定の幼馴染でもあり西の勇者パーティーメンバーのひとりでもあるアシュリーの姿があった。
そして現在、レイフォン達ふたりの近くには南の勇者達三人の姿もあった。
「どうしてそんな変な格好をしているの?」
「正直、ダサいと思うわ」
双子の姉妹シンメとトリーはゼロの姿であるレイフォンに話しかける。
レイフォンほあっさりミカレ達三人に正体がバレていた。
アシュリーに助けろと無言の視線を送るレイフォン。
しかし、アシュリーは諦めなさいという目で視線を返す。
ため息をついたあと、仕方ないと口を開いたレイフォン。
「……とりあえず見た目に触れないでもらえますか? あと、今の俺はとある事情によりゼロとして変装してこの大会に出場しています。なので他言無用でお願いします」
正体を認めたうえで三人にお願いしたレイフォン。
「事情はわからないけどわかりましたレイフォンさん、いや、今はゼロさんでしたね」
了承して頷いたのはミカレ。
続いてシンメとトリーのふたりも頷いた。
「「わかったわ」」
「ありがとうございます」
それから五人は雑談をはじめた。
ーーーーーー
レイフォン達五人が雑談をしていると
「おい、ちょっといいか?」
と、東の勇者カルカがペコを引き連れ現れ、アシュリーに向けて声をかけてきた。
「どちら様ですか?」
首をかしげて尋ねるアシュリー。
「俺だよ! 俺俺!」
「オレオレ、さん?」
カルカの事をまったく覚えていないアシュリー。
「違う! 俺だ俺! イースラ王国勇者カルカ様だ!」
「すみません、存じ上げません」
名前を聞いてもわからないアシュリー。
「あの…? 東の勇者の貴方がアシュリーさんに何の用ですか?」
間に入りカルカに尋ねたのはミカレ。
「ん? 南の勇者か? お前もこの女を知っているのか?」
「私は貴方を知りません」
アシュリーは主張する。
「もうそれはどうでもいい! それよりもあのお方はどこにいるんだ! そもそもどうしてあのお方の姿がここにはない?」
あのお方? アシュリー達には誰の事なのかわからない。
「あ、あの、お久しぶりですアシュリー様。えっと…カルカが言っているのはミリベアス姐さんの事です」
挨拶をし答えたのはペコ。
「貴方は確か……ポチ、さん? というか、ミリベアス、姐さん?」
カルカの事はまったく覚えていないがペコの顔は覚えていたアシュリー。
(ポチ? 神様と同じ名前?)
黙って見ていたレイフォンは思った。
ただ、神様の名前はポチではない。
「いや、そのすみません…僕の名前はペコですアシュリー様…」
申し訳なさそうにペコは間違った自分の名前を訂正した。
「あ、ごめんなさい…」
名前を間違って恥ずかしそうに謝ったアシュリー。
「だ、大丈夫です。本来なら印象が薄く顔すら覚えられない僕の事を覚えて頂いていた。それだけで、僕は嬉しいです」
手を振りながらぎこちない笑顔でそう言ったペコ。
「どうしてペコが覚えられていて俺が覚えられていていないのかは納得は出来ないが……それより! あのお方、あのお方はどこにおられるのだ!」
騒ぐカルカ。
ペコの登場とカルカの物言いから少しだけカルカの事を思い出したアシュリー。
「ちょっと静かにしてください。あのお方? ミリベアスならこの場にはいません。ただ、このジャリックの国には私達と一緒に来ています。だけど、どこにいるのかは貴方には教えられません」
カルカを軽く注意してからミリベアスがジャリックに訪れている事は教えたアシュリー。
しかし、居る場所までは教えなかった。
「何故だ! 何故、教えられん!」
(貴方が危ない人だからでしょ! あと、厄介そうだし…)
声には出さないがそう思ったアシュリー。
どいしてもミリベアスに会いたく居場所を知りたいカルカはアシュリーに詰め寄ろうとする。
「いいから教えろ! さっさとーーー?」
「おい。誰だか知らないけどそれ以上近づくな」
アシュリーに詰め寄ろうとするカルカの肩を掴み止めたのはレイフォン。
「レイ……?」
レイフォンの偽名を忘れて名前を呟いたアシュリー。
アシュリーはそこまで気にしていなかったがレイフォンが気にしたのだ。
「誰だお前? お前には用はない。離せ! 俺はこの女に聞きたい事があるんだ!」
「離さない。つか、ミリベアスの事なら俺も知っている」
「何!?」
レイフォンの発言に反応したカルカ。
「お前もあのお方の事を知っているのか! なら教えろ! 今すぐ俺に居場所を教えろ!」
ターゲットをレイフォンに変え詰め寄ってきたカルカ。
だが、レイフォンは
「いや、それは個人情報保護法により、あんたにミリベアスの居場所は教える事は出来ない」
と、冷静な口調でカルカに返したのであった。
(よくわからないけど、こいつをミリベアスに会わせてはいけない気がするんだよな)
お読み頂きありがとうございました。
更新遅れ気味となっていますがこれからも何卒宜しくお願い致します。




