Episode 168
イースラ王国の勇者カルカ。
ジャリックに訪れ城のパーティーに参加していたカルカは先程から周囲をキョロキョロとしながら見渡していた。
「あのお方はどこにいるんだ」
カルカは探していた。
あのお方、カルカが女王様と呼ぶミリベアスの事を。
しかし、ミリベアスの姿は見当たらない。
なので、カルカはキレ気味に尋ねた。
「おいカルカ! あのお方の姿が見当たらないぞ!」
尋ねられたのは今回、武道大会本戦に勝ち上がってきた東の勇者パーティーメンバーのひとりペコ。
というか、東の勇者パーティーメンバーはふたりだけだが…。
ペコは嫌そうに言葉を返す。
「…あのお方って姐さんの事だよねカルカ?」
ペコにとってはミリベアスは姐さんと呼び尊敬出来る存在。
理由はミリベアスがワガママで自分勝手な勇者カルカを簡単に倒し、手懐けて? しまったからである。
「そうだ。あのお方が本戦に勝ち上がって来てないはずがないだろ? この俺を倒すだけの力があるお方なのだからな」
「そうだね。だけど姐さんの名前は選手リストにはなかったと思うけど…」
申し訳なさそうに答えたペコ。
それを聞いたカルカはショックを受ける。
「なんだとぉおおお!! あのお方がこの場に居られないだとぉおおお! なんて事なんだ! 俺は何の為にジャリックまで来たと思ってるんだ!」
他国の勇者との交流と武道大会本戦の為だ。
この本戦の上位三名が世界の運命をかけた魔族との六対六の勝負の選抜メンバーになるのだ。
逆に何の為に来た? と問いたい。
「カ、カルカ、静かに。あ、そうだ。あの人なら何か知ってるかも知れないよ」
周囲など気にせずショックの叫びをあげるカルカをペコはなだめる。
そして、ペコが指差す先、そこにはアシュリーの姿があった。
そばには南の勇者ミカレ達の姿も見える。
「あの女は確か…あのお方と一緒に居た女だな」
「うん、今回の本戦に勝ち上がってきた選手でもあり、ウェスタリア王国の勇者パーティーメンバーであの、英雄の女神様と呼ばれているアシュリー・テンペリス様だよ」
ペコは補足するように話した。
「あの女がな……というかペコ? 何故、様付け何だ?」
「だって有名人だし、貴族の人だし……」
苦笑いで答えたペコ。
「そんなの気にするなって俺はいつも言っているだろうが、俺達は確かに平民だ。だが今は俺は勇者でお前はその勇者パーティーメンバーなんだ。貴族とか関係ないんだよ」
「でも…」
「でもじゃねぇ! お前は俺の唯一の仲間なんだ。しっかりしろよな」
「ご、ごめんなさいカルカ…」
少しだけカルカの事がカッコイイと思えたペコ。
「まっ、いい。それよりあのお方の事だ。俺の体があの方を求めているんだ。罵倒されたい殴られたいとな。想像しただけでゾクゾクするぜ」
前言撤回ーーーカルカは気持ち悪いと思ったペコ。
「よし、ペコ行くぞ。あのお方、女王様の事をあの女に確認しにな」
「え、あ、うん…」
そして、ふたりはアシュリー達の元へ向かったのであった。
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