Episode 167
「あ、お久しぶりです。ミカレさん、シンメさん、トリーさん」
ミカレ達がこの場に居た事は知っていたのでさほど驚きはせずに、自然と挨拶を返したアシュリー。
「やはり、アシュリーさんは本戦に勝ち上がって来ていましたね。アシュリーさんなら当然、本戦に来ると私達は思っていました。それと、あの時は本当にありがとうございました。改めて感謝を言わせてください」
「「ありがとうございましたアシュリーさん」」
アシュリーに頭を下げたミカレ達三人。
アシュリーは気にしていないと両手を振る。
「や、やめてください。あれは当然な事をしただけです。それにあれは秘密ですので……だから、頭を上げてください」
あの時とは、サウザトリス王国の魔族に滅ぼされた街で第六魔王軍将軍バルトスと戦った時の事である。
結果的にバルトスを倒したのはアシュリー。
だが、アシュリーは自分がバルトスを倒した事をミカレ達三人に諸々な事情の為に秘密にしてもらうようにお願いしていた。
バルトスを倒したのはミカレ達勇者パーティー三人だということにしてもらい。
倒した手柄の事はともかく、自分達では倒せなかったバルトスを倒したアシュリーに三人は感謝をしていた。
「ありがとうございます。そういえば、彼の姿が見えないみたいですけど彼はどちらに?」
彼とはレイフォンの事である。
ミカレはアシュリー同様にレイフォンも当然、武道大会に参加しており、これまた当然勝ち上がり本戦出場を決めていると思っていた。
しかし、レイフォンの姿は見当たらす、代わりにアシュリーのそばにいたのは白いフードで白い仮面の人物。
ミカレはレイフォンだとは"まだ"気づいていなかった。
「あ〜、レイならーーーん!?」
そんなミカレにあっさりとゼロの正体をバラそうとしたアシュリー。
だが、途中で突然と声が出なくなった。
『こら! あっさりバラそうとしてんじゃねぇよ!』
頭に直接聞こえてくる声。
声の正体、アシュリーの声を(魔法で)出なくしたのもゼロ(レイフォン)である。
『レイ! 何よ! 別にいいでしょ! ミカレさん達なら』
『ダメだ! 何の為の変装だと思ってるんだよ!』
『ん? レイの趣味じゃないの?』
『ちげーよ! とにかくだ…俺の正体は絶対にバラすなよ?』
(面倒だから色々と)
『それって、ふり、よね?』
『ガチだよ! ガチ!』
(つか、なんで、そんな事知ってんだよ…)
頭の中でやりとりを交わすふたり。
そんなやりとりをしているとは知らないミカレ達三人からすると、ただふたりが無言で見合ってるようにしか見えていなかった。
「あの…アシュリーさん?」
声をかけにくそうに声をかけてきたのはミカレ。
『わかった。わかったわ…わかったから私の声を返してよレイ。ミカレさんに言葉を返せないでしょ?』
『絶対にバラすなよ?』
ゼロは念をおしてから魔法を解除した。
「あ、えと…すみません。レ、レイの事でしたよね? レイならいないです。武道大会には参加していません」
アシュリーは約束通りにゼロがレイフォンである事をバラさなかった。
しかしーーー
「え、いや……その…でも彼がーーー」
「「君がレイフォン君よね?」」
ミカレ達三人はふたりが無言で見合ってる様子からゼロの正体に気づいてしまっていた。
ゼロは無言で自分はレイフォンではないと首を左右に振る。
アシュリーは私はバラしてないわよと一度ゼロをチラッと見てから誤魔化すような笑顔を三人に見せたのであった。
「あははは……」
(ドンマイ、レイ)
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