Episode 160
Aブロックの翌日に行われたBブロックではアッシュ、翌々日に行われたCブロックではアーニャと言う名前の魔法使いの女性が勝ち残り、中立国ジャリックで開催される本選の大会へと出場を決めていた。
そして本日、ゼロ(レイフォン)とミリベアスの兄マクベアスが出場するDブロックバトルロイヤルが行われる。
競技場にはふたりを含めた百人の参加者達が開始の合図を待っていた。
「小僧、死ぬ覚悟は出来ているな?」
「そうすっね」
マクベアスに声をかけられたゼロは適当に返事を返す。
そもそも、結界が張られている為に殺し合いなんて出来ないしと思ったゼロ。
「ふっ、相変わらずふざけた小僧だ」
そんなには会ってはいないとゼロは思う。
そうこうしているうちに開始の合図が鳴った。
すると開始直後。
「まずは邪魔者を消し去ってくれる」
と、黒いレーザーのような魔法で次々に参加者達を排除にかかったマクベアス。
それを見ていた観客達がどよめく。
気づけば競技場にはゼロとマクベアスのふたりだけになっていた。
「これで私と小僧だけになったな」
ゼロにとっては嬉しくない言葉であり、面倒な展開。
「そうっすね……」
「さてと、邪魔なものがもうひとつあったな」
マクベアスはおもむろに何かに向かって黒いレーザーを放った。
結界を張っている魔道具である。
マクベアスにより破壊された魔道具と消えた結界。
流石にこれには大会運営員の待ったの声が入った。
「何をしているんだ君は!」
(本当に何をしてくれてるんだよこの人、いや魔族は……)
だが、マクベアスは気にしない。
「かまわん。続ける」
「何を言ってるんだ君は!結界のない状態で戦ったらーーー」
「黙れ。私に指図するな」
マクベアスが睨みを聞かせると止めに入ってきた大会運営員の男性はまるで催眠にかかったように大人しく引き下がった。
観客達には何が起こっているのかわからない状況。
そして、放送が流れる。
『先程、マクベアス選手の魔法が誤って結界を張っていた魔道具に当たりましたが問題はありません。試合を再開します』
放送から流れた声はさっきの男性のものだった。
「だそうだ小僧。続けるぞ」
ニヤッとした笑いでゼロに声をかけてきたマクベアス。
問題がないわけないだろ? と思うゼロ。
確かに魔道具は破壊されたはずだった。
だが、確認すると魔道具は壊れていない状態に戻っていた。
いや、そう見えるように魔法がかけられていたのである。
(こいつが何かやったんだな)
と、ゼロは推測した。
当然、結界は消えたままである。
他の人には張られているように見えているようだが。
「どうかしたか小僧?」
「どうかしたかじゃねぇよ。何が目的だ?」
「小僧を殺す事が目的だ」
マクベアスの答えに確かにそんな事ばかり言ってたな、とゼロは思い出した。
「わかった。戦ってやるから周りは巻き込むなよ?」
「いいだろう」
ゼロがいう周りと言うのはアシュリー達だけの知り合いの事をさした言葉だった。
ゼロ、いや、最近のレイフォンにはその性格が表には現れていなかったが、レイフォンには他人にはあまり興味がないふしがあった。
大切な人以外がどうなろうと関係ないというふしが……。
(さてと、面倒だけど……終わらせるか)
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