Episode 16
「頼んでいた実験は順調か?」
「はい。数ヵ所の人間の街や村の子供の数名に実験をしていますが、何人かは第二段階に入りました」
部下の魔族に実験の経過を聞いたのは
第九魔王軍将軍レゾナス。
「そうか。ならもうすぐだな」
「はい。第一段階は目の色が変わり、第二段階には目が見えなくなります。やがて、目はまた見えてくるようになるでしょう。しかしそれがーー」
「最終段階だな?」
「はい。その通りです。目が見えてくると同時に自我が消えていき、魔人化していくきます。そして魔人化した人間は自分達と同じだった人間を襲うようになるでしょう」
「人間が魔人になって人間を襲うか……予定通りだが、何ともおかしな事だな」
改めて実験の内容を確認して薄ら笑いを浮かべるレゾナス。
「はい。人間の子供で成功したら次は大人の人間で実験を致します」
「そうか。良い報告を期待している」
「はい。レゾナス様」
ーー
レゾナスは部下に命じて、ある実験をしていた。
それは
人間魔人化実験。
人間を魔人化させて人間を襲わせる実験。
人間の暮らす西の地方を任せられたレゾナスは昔からこの実験を考えていた。
しかし、魔王の言いつけによりレゾナスは実験を実行することが出来なかった。
だが、魔王が眠りから目覚め復活し、人間の国を攻めこむことが解禁された。
すなわち、人間を殺してもいい。
人間で実験が出来るという事でもあった。
レゾナスが考えた実験のが成功すれば、人間達は人間同士で殺しあう事になる。
「なんて素晴らしい事なのだ。我々は手を汚さずに人間達が勝手に殺しあうなんてな」
自分の考えた実験を自画自賛し手に持ったワインを掲げるレゾナス。
「この実験が成功すれば魔王様もお喜びにきっとなるだろう。さて、最終段階の報告が楽しみだな……フフフフ」
楽しそうに笑うレゾナス。
「それにしても……やはり人間の血は臭いな」
レゾナス達、第九魔王軍はウェスタリアにあるひとつの街を滅ぼし拠点にしていた。
レゾナスが座ってワインを飲んでいる場所はこの街の領主だった人物の屋敷の一室。
レゾナスの座る椅子のまわり、部屋には数人の人間の遺体が無惨な姿で転がっていた。
しかし、屋敷の外、街はもっと酷く無惨な状態になっていたのであった。
お読み頂きありがとうございました。