Episode 158
急遽行われたテストの翌朝。
予選のバトルロイヤルへ進出する合格者とブロックの振り分けが発表された。
各ブロック百名。
見事というか当然と言うかアシュリーは合格しAブロックでの出場が決まった。
続いてはアッシュ。
アッシュも合格しBブロックでの出場。
そして、Dブロック。
Dブロックにはマクベアスとそれからゼロ(レイフォン)の出場が決まっていた。
「レイ、ちゃんと勝つのよ。そして本大会に進んで約束を守りなさい」
発表後のアシュリーの言葉。
「ガキ、お前は俺が倒す。だからこんなところで負けるなよ」
アッシュの言葉。
最後に同じブロックとなったマクベアス。
「殺す……」
以上である。
アシュリーの時は少しほっとした表情を見せ、アッシュとマクベアスの時は面倒そうな表情を見せたゼロ。
バトルロイヤルは明日からAブロックから順番に一日毎に行われる。
とにかく出場が決まってしまったゼロは発表を確認したあと、屋敷に戻ってきていた。
ゼロから姿を戻したレイフォン。
レイフォンはそういえばと、ひとり誰かを忘れている事に気づいた。
「なぁアシュ? そういえば誰かもうひとりいなかったか?」
正直、どうでもいい事だとは思っているレイフォンだが一応とアシュリーに尋ねた。
「ああ……あれ……勇者様の事ね……」
苦笑いのアシュリー。
「そうそう、それ。で、勇者様はどうしたんだ?」
「う~ん……勇者様はね、その……正体がバレちゃったみたいなのよね。昨日のテストのあとに」
勇者レオンはレイフォンと再び戦う為、アシュリーの為に顔を完全に隠す仮面を被り、名前も変えて昨日のテストに参加していた。
正体がバレずにテストを無事に終えたレオン。
しかし、そのあとが問題だった。
レオンが正体を隠して参加する事は知っていたアシュリーなのだが、レオンがどのような格好と名前で参加しているかは知らなかった。
そして、テスト終了後にアシュリーに声をかけてきた仮面の男性。
レオンである。
だが、参加者にはレイフォンやレオン以外にも素顔を隠して参加している者が多かった。
それに、レオンは魔道具まで使い声まで変えていた。
アシュリーはレオンである事に気づいていなかった。
アシュリーにも気づかれない完璧な変装。
このままいけばバトルロイヤル出場も可能のはずだった……。
なのだがーーー
「僕だよ、僕。レオンだよアシュリー」
と、何を考えているのかアシュリーに気づかれないレオンは迷う事なく、まだ会場の中だと言うのに仮面を取り外したのである。
驚くアシュリー。
それから、アシュリーに会えた事が嬉しいレオンは満面のレオンスマイルで仮面を外した状態でアシュリーによくわからない決意などを語りかけた。
アシュリーはちゃんとレオンに仮面を被るようにうながした。
この場所ではまずいと。
たが、語りかける事に夢中になってしまっているレオンは聞こえていないのか、そのまま素顔のまま熱く興奮気味に語り続けた。
諦めたアシュリーは愛想笑いを浮かべてただ黙って聞いた。
後半は完全に苦笑いであったが。
その結果ーーーーーーバレてしまったのである。
会場に残る参加者の目撃証言によって。
「アホだな……」
「そ、そうかもしれないわね……」
話を聞いたレイフォンは呆れ、アシュリーは苦笑いを続けていた。
ーーーーーー
その頃、正体がバレて当然失格となってしまったレオンは泣いていた。
「僕の計画が……僕のアシュリーとの計画が……」
そんなレオンの側にいるのはマットとミミー。
「まっ、あれだ……ドンマイだレオン。またきっと機会は訪れる……はずだ」
自業自得だと思いながらも励ますマット。
ミミーは直球的に話す。
「いや、どう考えてもただのアホでしょ。せっかく正体がバレていなかったのになんで仮面を外したのよ? 一応レオンは勇者なのよ?」
「だ、だってきづかれなくて、それにアシュリーには僕の素顔をちゃんと見てもらいたくて……」
こう見えてもレオンは賢い人間である。
アシュリーの事さえ関わらなければ。
ため息をつくミミー。
「はぁ〜 駄目だわ……このアホ勇者」
「まあまあ、仕方ないだろ。レオンのこれはもう病気なのだからな」
「そうね。まっ、とりあえずアシュりん病のアホはいいとして、出場するのね彼……」
「ああ……楽しみだ」
自業自得で失格となったレオンはほっといて、ふたりは出場する事となったある人物を頭に浮かべ楽しみな表情を浮かべていたのであった。
もちろんゼロ(レイフォン)の事である。
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