Episode 153
「くそっ、結局マリベルとは何も話が出来なかったじゃないか」
アッシュはひとり王都の街を歩いていた。
(理解はよく出来なかったけどあのガキにマリベルが惚れているのはわかった。ま……それはかまわねぇ。だけど三人だと? ガキのくせに三人と結婚の約束をしているだと、ふざけやがって)
「ん? 待てよ。あの時マリベルは一言も言葉を発していなかったな。もしかして……あのガキに騙されている? 弱味を握られているんじゃないのか?」
アッシュの勝手な憶測。
「いや、間違いない、そうだ。どう見てもマリベルはあいつ(幼馴染み)と同じで大人しそうな性格だった。くっそーあのガキが」
知らないところで悪者にされていくレイフォン。
「確か強いとかもいってたよな。なるほど、そういう事か……」
レイフォンが己の力で脅しマリベルを支配しているのではないかと考えたアッシュ。
「俺も今じゃ外道だが、あのガキはもっと外道だな。ガキも武道大会に参加するんだったな。よし、今の俺のキャラじゃねぇけど、俺があのガキを成敗してやるぜ」
ーーーー
「今すぐにあの人間の小僧を殺してやりたい」
マクベアスは一旦魔国に帰って来ていた。
「マクベアス様どうなされーー」
「うるさい!」
ブッシュ!
声をかけてきた部下を躊躇なく殺したマクベアス。
「今の私は機嫌が悪い。話しかけるな」
レイフォンをすぐにでも殺してやりたい気持ちのマクベアスだが、ミリベアスに戦うのは人間の武道大会でと約束してしまった為に渋々我慢をしている状態であった。
可愛い妹ミリベアスとの約束は絶対なのである。
「どう見てもただの人間で小僧のあれが私より強いだと? ミリベアスの言葉なら信じてあげたいとこだが……」
マクベアスはレイフォンが普通の人間にしか見えていなかった。
「ま、ともかく人間の武道大会とやらに私が参加してあれを私が殺せば全てがうまく収まるのだ。仕方ないが今は大人しくしておこうじゃないか」
少しだけ落ち着きを取り戻したマクベアス。
その時、マクベアスの元に新たな部下が現れた。
「マ、マクベアス様よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
マクベアスの足元の転がっている仲間の死体を見てびくついている部下。
「ま、魔王様がマクベアス様をお呼びのことです」
「父上が?」
「は、はい。自分はレギアス様に頼まれまして……」
「そうか、わかった。しかし何故レギアスが直接私のところへ来ない?」
機嫌の悪いマクベアスには誰も近づきたくないからではとは言えない部下。
本当は自分も嫌だった部下。
マクベアスはすぐに気分だけで部下でも誰でも殺してしまうのだから。
「きゅ、急用があるとおっしゃっていました」
「そうか」
「は、はい。では自分は失礼致します」
部下が下がっていったあと。
「父上が私に何のようだ? 私は可愛いミリベアスの事で頭がいっぱいだと言うのに」
父親の魔王が自分を呼び出す理由を考えるシスコンマクベアスであった。
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