Episode 152
アシュリーの屋敷に今現在居るのはレイフォン、アシュリー、ミリベアス、マリベルの四人。
男性三人は屋敷から去っていた。
「どうしてこうなった……」
ぼやいているのはレイフォン。
あのあと、ミリベアスの誘導でレイフォンはマクベアスとアッシュと戦う事が決まってしまったのである。
レオンの事は……ここでは触れないでおこう。
「しかもどうして武道大会なんだよ。俺、顔出しNGって言ったよな?」
言ってはいない。
「だからレイフォンは名前も変えて変装して出場すればいいでしょ?」
「そう言う問題じゃねぇよ。つか、アシュとマリベルはずっと黙っているけど何か言いたいことはないのかよ?」
「わ、私は別に……いいと思うわ」
「私もです……」
「そうかよ……。つか、ミリベアス?」
「何かしらレイフォン?」
レイフォンはミリベアスにだけに聞こえるように話す。
「お前の兄ちゃんって事は魔王の息子だよな? 次期魔王だよな?」
「そうね」
「そんなんが人間の武道大会に出てもいいのかよ?」
「それなら大丈夫よ。お兄様はレイフォンと戦いたいだけだから別に優勝なんて考えてはいないわ。レイフォンと戦ったらすぐに帰るわよ魔国に」
「いや、お前がそう仕向けたんだろうが? つか、その時お前も一緒に帰れよ魔国に」
「そうね……お父様にレイフォンと結婚をする報告をしないといけないし……一度帰るのありかも知れないわね」
「違う!」
ある意味ミリベアスを野放しにはしておけないと思ったレイフォンであった。
ーーーー
勇者レオンに用意されている王都内の屋敷。
「マット……僕はもう駄目かも知れない……」
「ど、どうしたんだレオン?」
マットはレオンに相談があると呼び出されていた。
「フラれてしまったんだ……完全にね……へ、へへへ」
まるで魂が抜けたかのようなレオンの姿。
「フラれたって誰にだ?」
「僕に言わせる? こんなボロボロの僕に名前を言えと言っているのかマットは!」
情緒不安定のレオン。
「い、いやすまないレオン」
(ついにフラれてしまったかアシュリーに……)
「マット見てくれ。蝶が」
「レオン、あれは蛾だ」
これは流石にパーティーに影響が出るのではないかと心配になってきたマット。
「レ、レオン、女性はアシュリーだけではないんだ。今は辛いかもしれないがーー」
「アシュリー……アシュリー……アシュリー……アシュリー!!」
突然叫び出すレオン。
これは本当にヤバイと悩み考えるマット。
(そうだ)
「……レオン、レオンは一度フラレただけで諦めてしまう男なのか? それでも勇者なのか?」
「し、しかしアシュリーにはレイフォン君が……」
「確かに今のアシュリーの気持ちは少年の方にあるかも知れない。だが、だからと言って諦めるのか? 知っているかレオン? 人間と言う生き物の気持ちは移り変わりが激しいんだ。今は向こうに好意を抱いていても気づいたら変わっているという事はよくある事だ」
「な、なるほど……」
「だから今後のレオン次第ではまだ逆転するチャンスがあるかもしれないじゃないか」
「……逆転するチャンス」
レオンは目を瞑って考えている。
マットはレオンの性格をよく知っている。
「そ、そうだな。そもそも三人と結婚するなんておかしいんだ」
「三人? 結婚?」
「よし! 僕がアシュリーの目を覚まさせて取り戻して見せる。僕はもう絶対にレイフォン君には負けない!」
よくはわからないが元気を取り戻したレオンの姿を見て、ひとまず安心したマット。
「マット、僕も正体を隠して武道大会に参加するよ」
「は?」
「僕には倒さないといけない相手がいるんだ」
「はぁ~?」
マットには意味がわからない。
(待っていてくれアシュリー。君の為に僕がレイフォン君を倒して見せるから)
打倒レイフォンを掲げるレオンであった。
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