Episode 148
アシュリーの屋敷。
「おい勇者! 何を私の可愛い妹をジロジロと見ている!」
「み、見ていない! 言いがかりだ」
「どうして俺はついて来てしまったんだ……」
レオン、マクベアス、アッシュの三人はアシュリーの屋敷へと訪れていた。
ーーーー
少しだけ時間は遡る。
マリベルの声かけにより街で合流したアシュリー達三人。
アシュリーとミリベアスは渋々と一緒に居た勇者レオンと兄マクベアスを紹介する事になり、マリベルはよくわからないまま流れでアッシュを紹介する事になった。
マクベアスは魔族とは名乗っていない。
ミリベアスから黙ってるように言われたからである。
互いの紹介も終わったところでアシュリー達三人は男性三人をほっといて屋敷に帰ろうとしていた。
主にアシュリーがレオンから、ミリベアスがマクベアスからさっさと離れたかったのである。
だがしかし、それに待ったをかけたのはマクベアスとレオンであった。
「ミリベアス、私を置いていくのかい?」
「アシュリー、まだ僕は君に話があるんだ」
「お、俺もだマリベル」
勢いで便乗するアッシュ。
困るアシュリー達三人は相談する。
「ど、どうしますか?」
「私はほっといてもいいと思うんだけど」
「わたくしもと言いたいところだけど……お兄様しつこいのよね」
「勇者様もなのよね……」
ため息をつきマリベルを見るふたり。
「わ、私はアッシュさんとは今日が初対面なので……」
「そういえばそんな事を言ってたわよねさっき」
「そうだわ。もう面倒だから屋敷に連れていって紹介してしまいましょう」
「「紹介?」」
ミリベアスの言葉に疑問のふたり。
「レイフォンを紹介するのよ。わたくし達の将来の旦那様だって」
「ちょっ、それは!?」
「え、え、えっ!?」
ミリベアスは元より兄マクベアスにはレイフォンを紹介するつもりであった。
だがそんな紹介の予定など考えもしていなかったふたりは顔を赤くして動揺する。
「勇者だっけ? アシュリーここはもうはっきりと伝えた方がいいとわたくしは思うのよ。見るからにアシュリーに好意を持ってるみたいだけど、もしかしてレイフォンだけではなくアシュリーは勇者にも興味があったりするのかしら?」
「な、ないわ! わ、私はレ、レイだけよ」
恥ずかしそうに答えるアシュリー。
「ふふっ、ならはっきりそう言ったらいいじゃない? マリベルも同じよ?」
「え? 私ですか?」
「そうよ。あのアッシュってのはたぶんマリベルに気があるわよ」
「へ? 何を言ってるんですかミリベアス! さっきも話したけどアッシュさんとは初対面でーー」
「そんなの関係ないわよ。もしかして彼が気になる?」
「アッシュさんが気になるとかそうじゃなくて……あと私はレイフォンさんの事は……その……」
まだふたりにははっきりとレイフォンの事が好きだと告白した事のないマリベルは口ごもる。
「レイフォンの事好きじゃないの?」
「ち、違います! 好きです! ……あっ」
勢いで言ってしまい恥ずかしそうに顔を赤くさせうつむくマリベル。
「ふふっ、ならふたりともいいわね? あの三人を屋敷に連れて行ってレイフォンの事をわたくし達の将来の旦那様だって紹介するわよ。そしたら諦めてくれると思うわ」
(お兄様は諦めないと思うけど、そこはレイフォンに任せましょう、ふふっ)
ミリベアスの表情は楽しそうである。
「わ、わかったわ……」
「わ、わかりゃましゅた……」
顔を赤くしたまま頷くふたり。
マリベルは動揺でカミカミである。
(ど、どうしてこんな事になるのよ……でも……)
確かにはっきりさせる事はいいかもと思うアシュリー。
(い、言ってしまいました。す、好きって……)
本人にはまだ直接告白したわけではないのに動揺しまくりのマリベルであった。
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