Episode 147
「よ、よかったら俺があんたを送って行ってやる。ほら、また誰かにぶつかったりしたら危ないだろ?」
アッシュは亡くなった自分の幼馴染みの彼女にそっくりであるマリベルが気になって仕方なかった。
「いえ大丈夫です。すぐ近くですから……」
困った表情を浮かべるマリベル。
「あ、そうだ。まだ俺は名前を言ってなかったな。俺の名前はアッシュ。あんたと同じで苗字はない」
「アッシュさん、ですか。そうですか……」
(どうしよう……)
マリベルが困ってるそんな時。
「勇者様だ!」
「アシュリー様だ!」
など周囲から騒がしい声が聞こえて来た。
ーー
「どうして勇者様は私について来るんですか? しかもこそこそと」
「どうしてってアシュリーが心配だから」
アシュリーは勇者レオンにストーキングされていた。
「私は大丈夫なので帰ってください」
「いや、けど外は危ないし」
「危なくありません。それに何かあっても私なら大丈夫です」
(危ないのは貴方です)
アシュリーは困っていた。
ーー
「あ、アシュリー」
アシュリーの姿に気づいたマリベル。
「凄い歓声を浴びてるみたいだけど知り合いか? あのふたり?」
「あ、はい。女性の方がお友達なんです。と、言う事なので私はもう大丈夫です。ではアッシュさん、また」
マリベルはアッシュに声をかけ、アシュリーの所に駆け出そうとした。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
しかし、アッシュに腕を掴まれ呼び止められたマリベル。
「な、何ですか?」
「いや、そのなんだ……」
勢いで呼び止めてしまったアッシュは何を話せばいいのか考える。
「あのさ……よかったら俺とーー」
アッシュがマリベルに話しかけようとした時、今度は別の方向から騒がしい声が聞こえて来た。
ーー
「ミリベアス! どういう事だ! 私は聞いていない! 好きな奴だと! ミリベアスは自分より強い者しか興味がないのではなかったのか? なぁミリベアス! 私は、私は認めない。認めてたまるか! そいつは誰だ! 誰なんだ! 殺す、殺す、殺す」
「お兄様、恥ずかしいのでお静かにしてもらえますか?」
マクベアスに好きな者が居ると伝えてしまったミリベアス。
当然、シスコン兄は黙ってはいなかった。
「いや、しかしだな……そもそも私と父上以外にミリベアスより強い者などが居るはずがないのだ。ミリベアス頼むから変な冗談はよしてくれ」
「冗談? ふふっ」
薄く笑みを浮かべたミリベアス。
「残念ながらわたくしの好きな方はわたくしより遥かにお強いですよお兄様。いえ、おそらくお兄様……お父様よりも強いかも知れませんね」
「バカな! そんな奴がこの世界に存在するはずがない。どうしたんだいミリベアス?」
絶対に認めたくない、信じていないマクベアス。
「なら、お兄様? 試してみます? 戦って? もし、お兄様が負けたら今後はわたくしには構わないで頂けますか?」
「……いいだろう。私が勝ったらミリベアスは大人しく魔国にーー」
「帰ります。なんなら、これからはずっとお兄様のそばにいますよわたくし」
「ほ、本当か!」
驚き、歓喜の声をあげるマクベアス。
そんな兄を見て予定通りと口を小さくニヤっとさせたミリベアス。
(ただ、レイフォンが戦ってくれるかどうかなのよね……)
ーー
「あれもマリベルの知り合いなのか?」
「は、はい。あちらも女性の方が私のお友達です……」
接近する三組の男女。
その時、レイフォンは
「へへ……天に帰してやったぜ……調子に乗るからだ……むにゃむにゃ」
ベッドの上、神様との夢を見ていたのであった。
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