Episode 146
城での報告を終えたアシュリー。
「さてと、レイがそろそろお腹空かせている頃だから早く帰らないといけないわね。ふふ」
レイフォンが屋敷で自分を待ってると思い、嬉しそうな表情を浮かべるアシュリー。
ちなみにアシュリーは料理は出来ない。
「ミミー達はお城には居ないみたいだから、また会った時に挨拶をすればいいわよね。しばらくは王都に居るんだから」
アシュリーが考えながら城の廊下を歩いている時だった。
「アっシュり~ん!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「アシュリぃいいいいい!」
もうひとりの声も。
アシュリーに近づいてくる三人。
「久しぶりだなアシュリー。旅はどうだった?」
「アシュりん、おっひさ!」
マットは軽く手を上げ普通に、ミミーはアシュリーに抱きつきながら挨拶を
勇者レオンは
「アシュリぃいいいい!」
民衆には見せられないような泣き顔でアシュリーの名前を絶叫。
「……ふたりとも久しぶり。あと、ただいま」
「「おかえり」」
アシュリーはレオンをスルーする事に決めた。
マットもミミーもスルーをする方針のようだ。
(流石に今の勇者様には声をかけたくないわ)
(レオン……お前は……)
(キモっ)
三人の心の声である。
しかし
今日のレオンはひと味違った。
レオンはすぐに顔と姿勢を正し
「おっと、僕とした事がアシュリーに会えた事に取り乱してしまった。すまない。おかえりアシュリー。元気だったかい?」
と、髪をかき上げキラリと歯を見せるレオンスマイルをアシュリーに向けた。
「は、はい……。た、ただいまです勇者様……」
表情をひきつらせながら仕方なくと挨拶をするアシュリー。
「"ひとり"旅はどうだったかい? "ひとり"だと何かと不便じゃなかったかい? けどよく"ひとり"で頑張ったねアシュリー」
やたらとひとりと強調するレオン。
「あの……その……実は旅の途中で一緒に旅をする仲間が出来てひとりではなく四人と……一匹? で旅をしてたんです」
「四人と、一匹かい?」
予想外の答えにあれ? と思うレオン。
「女性ふたりと子犬とあと……」
「レイフォン君だよね?」
答えたのはミミー。
「あ、うん」
(やっぱりミミーにはバレてたか)
「良かったなレオン。少年とふたりきりではなかったらしいぞ」
レオンに耳打ちしたマット。
「あ、え? そうなの、かい?」
マットに言われるも良かったのかよくわからないレオン。
「なら、私にもそのふたりと子犬を紹介してよアシュりん。アシュりんの仲間は私の仲間だもん。ね?」
「わ、わかったわ。しばらくは王都に居るからどこかで紹介するわ」
「やったー!」
嬉しそうなミミー。
「ところでアシュリーが世界武道大会に参加する事は聞いているが、少年は参加しないのか?」
「あ、それ私も聞きたかったかも」
「少年? レイの事ね。レイなら乗り気じゃないみたい。だから、参加はしないと思うわ」
「やはりそうか……残念だ」
「やっぱり」
「それに仮に参加してもレイの事だから真面目に戦わないと思うの」
「どう言う事アシュりん?」
「ふふ、レイは不真面目だから」
「ん? よくわからないけどアシュりんがそう言うならそうなんだろうね」
「幼馴染みは何でも知ってるってやつだな」
三人だけで進む会話。
(レイ、レイ、レイって……僕の事もレオって呼んでくれればいいのに)
「あの、アシュリー?」
会話に割り込んでアシュリーに声をかけるレオン。
「どうかしましたか勇者様?」
「僕の事もそろそろ名前でレオン、いやレオって呼んでくれないかい?」
レオンの目は真剣である。
だがしかし
「申し訳ありませんが、以前にも言いましたが私の口からは恐れ多くて勇者様を名前では呼ぶ事は出来ません」
やはり拒否される勇者様であった。
(何だかレオンは一生アシュりんから名前を呼ばれない気がするわ……ドンマイ、レオン)
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