表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/198

Episode 145

 屋台の並ぶ王都中央広場。 


「うん、やっぱり人間の国の食べ物は美味しいわね」


 ミリベアスは屋台で購入した鶏肉をパンに挟んだものをひとり椅子に腰かけ食べていた。


「ん?」


 何かが空からこっちに向かって飛んでくる事に気づいたミリベアス。


 飛んできたのは黒い鳥。


 鳥はミリベアスの肩にとまる。


「闇鳥と言う事は魔王城からね」


 黒い鳥の名称は闇鳥。


 北の地域、魔国に生息する鳥。


 食べても美味しくない。


 主に魔族の間では連絡手段として闇鳥が使われている。


 闇鳥の足にくくりつけてある紙を取り、読みはじめるミリベアス。


 ミリベアスが手紙を読みはじめたのを確認すると闇鳥は再び空へと飛んで行った。


「レギアスからの手紙ね。えっ~とーー任務から戻って来たお兄様がわたくしを探しに人間の国に向かったって……はぁ~」


 手紙を読み終えたミリベアスはため息をついた。


「すっかり存在自体忘れていたのに……まさかお兄様がわたくしを探しているだなんて……はぁ~、とても面倒だわ」


 ミリベアスは兄の事が苦手だった。


「見つかるのも時間の問題ね。さて、どうするかしら……」


 ミリベアスが考えるそぶりをした、その時だった。


「どうするんだいミリベアス? いや、私の可愛い可愛い妹のミリベアス」


「お、お兄様!?」


 ミリベアスのうしろから突然現れた美形の青年。


 マクベアス。


 ミリベアスの兄であった。


 見た目はミリベアスと同じで人間と変わらない。


「驚いたかい? 驚いたミリベアスの顔もキュートだね。私はずっとミリベアスに会いたかったんだよ。城に戻ったらミリベアスが居ないって聞いて私は絶望のあまり部下を数体殺してしまったんだから」


 ミリベアスに会えてとても嬉しそうなマクベアスと驚きからひきつった表情へと変わっているミリベアス。


 苦手意識の表れである。


「わ、わたくしもお兄様には会いたかったんですよ」


 嘘である。


「そうか、そうか。うん、うん。さて、ミリベアス? 私と一緒に魔国に帰ろう。ミリベアスの大好きだったドラゴンの血を用意してあるんだ。帰って私と一緒に飲もうじゃないか」


 ミリベアスは別に好きではない。


「その……お兄様、申し訳ありません。わたくしには大事な用事があるのです」


「用事? この国の人間でも皆殺しにでもするのかい? なら私がこの国の人間どもをーー」


「違います! やめてください!」


「ミリ、ベアス?」


 ミリベアスからの否定と拒否に戸惑うマクベアス。


「ど、どうしたんだいミリベアス?」


「お兄様はすぐに殺す殺すって、殺す事しか頭にないんですか?」


「ち、違う。私はミリベアスの事もーー」


「わたくしの事もです。わたくしはもう子供ではないのです。いい加減に妹離れをしてくださいお兄様」


「む、無理だ!」


 即答するマクベアス。


「殺しはやめれても、ミリベアスはやめられない! いや、違うな。ミリベアスから離れる事など私には不可能だ。今回の任務中だってミリベアスと離れて会えなくてどんだけ辛かった事か……ミリベアスに私の気持ちがわかるかい?」


 熱く語るマクベアス。


「わかりたくもありません! そんなこと……はぁ~」


(勇者でも誰でもいいからお兄様を討伐してくれないかしら)


 本気で思うミリベアス。


(だけど、たかが勇者じゃお兄様を倒す事なんて無理よね。お兄様はこれでも強さ"だけ"は本物なんだから……)


「あっ!」


 何かを思い出したかのように声をあげたミリベアス。


「どうしたんだいミリベアス?」


「いえ、なんでもありません」


 ミリベアスはある人物を頭に浮かべていた。


(いるじゃない。お兄様にも勝てる人物、わたくしの将来の旦那様が)


 

お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ