Episode 141
レイフォンとアシュリーがレストランに戻ったあと、アシュリーは皆に自分の態度が悪かったこと不機嫌だったことなどを謝った。
誰も気にしていない、皆はそんな様子でアシュリーを迎え入れた。
それからはじまったアイラの誕生日をメインに行われた祝いの食事会。
誕生日を誰かに、大勢に祝ってもらったことなどないアイラが嬉しさのあまりに涙するという一面もあった食事会。
そんな、楽しい食事会もルンが眠ってしまった辺りでお開きとなった。
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自宅に帰ってきたレイフォン達3人。
「ルンはベッドに寝かして来たぞ。つか、アイラは眠くないのか?」
「うん。なんだか興奮しちゃって、へへへ」
「そっか」
いまだに楽しそうな表情のアイラを見て微笑むレイフォン。
「今度はルンの誕生日も祝ってやらないとな」
「うん。ルンもきっと、絶対に喜ぶよ。ありがとうレイ兄さん」
「家族だからな。けど、明後日にはまた俺達は旅に出ることになってるんだ」
「そっか……そうだよね」
みるみると表情が暗くなっていくアイラ。
「大丈夫だ。またすぐに帰ってくるし。何かあってもすぐに帰ってきてやるよ。知ってるか? 俺は実は世界最強なんだぜ」
「世界、最強?」
首を傾げるアイラ。
「アイラも俺の魔法を見たことあるだろ?」
「うん、凄かった。おかげでルンも助かって、目まで見えるようになって、あとこんな楽しい生活を送れるようになって、それと、それと……」
「後半は魔法関係ないけどな」
苦笑いのレイフォン。
「だけどね。全部魔法みたいで、全部レイ兄さんのおかげで。うん、レイ兄さんは世界最強だね」
「ま、そういうことだから、何かあっても俺がお前ら姉妹を妹達を守ってやるから安心しろ」
「ありがとう……レイ兄さん」
優しくアイラの頭を撫でるレイフォン。
「あと、ほらこれ」
レイフォンが差し出したのはふたつのお揃いのブローチ。
「お守りだ。俺が居ない時に本当に困ったことがあったらそれに願って見ろよ」
「願う? これって私とルンの?」
「そうだ」
「ありがとう……私、私だけじゃない。ルンだってレイ兄さんがお兄さんになってくれて本当に嬉しいよ」
「そっか。なら、また俺が居ない間はこの家のことを頼んだぞ。妹」
「うん!」
ふたつのブローチ。
ブローチにはレイフォンの魔法がかけられていた。
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二日後。
レイフォンの言った予定通り、レイフォン達はテスターの街から王都へと旅だった。
旅立ちの際は多くの街の人々が見送りに集まってくれた。
ルンは最後の最後まで泣いていた。
それでもちゃんと大きく手を振り見送ってくれた。
テスターの街から少し離れた場所。
馬車の中。
「ぐす……ぐす……」
マリベルが泣いていた。
「お前はいつまで泣いているんだよ」
「だって、ルンちゃんの、ルンちゃんの……」
ルンからの貰い泣きである。
「って、アシュまで……」
「う、うるさいわね! あんな幼い子に涙されながら見送られたら誰だって貰い泣きするわよ」
「あら? ならわたくしも泣いた方がいいのかしら?」
「泣かなくていい……」
それからもしばらくマリベルとアシュリーはルンを思い出してなのか泣いていた。
(気持ちはわからないではないけど、泣きすぎだろ……)
短くも長くも思えたテスターの街での一週間。
そして
いよいよはじまる世界武道大会予選。
現在このメンバーの中での参加予定はアシュリーのみ。
マリベルの参加は絶対にないとして、レイフォンとミリベアスの参加はあるのだろうか?
お読み頂きありがとうございました。




