Episode 140
ひとり夜道を歩くアシュリー。
だが、向かっているのは屋敷ではなかった。
(どうして私はレイから逃げるようにお店を出ちゃったのかしら……)
自分でもよくわかっていないアシュリー。
(確かにレイを捕まえられなかった事は悔しいわ。あと、あの勝ち誇ったような顔もムカつくわ。あとは……)
「ああ、もう! あれはミリベアスが勝手に言いはじめた事で、そもそもレイは覚えていなかったのよ。何を気にして落ち込んでるのよ私。だからレイが別に私とけ、け、け……を……とにかく! したくなかったとかそんなんじゃなくて」
アシュリーのひとりごとはヒートアップしていた。
幸い、アシュリーが歩く道には人がいなかった。
「もう! 全部、ぜ~んぶ、あのバカレイのせいなんだからね! ふぅ~ 少しだけ落ち着いたわ」
声を出し言葉にした事で少しだけスッキリしたような表情になったアシュリー。
その時だった。
「何が俺のせいだってアシュ?」
「え!?」
驚き左右をキョロキョロと確認するアシュリー。
「上だ。上だよアシュ。よっと」
建物から飛び下りアシュリーの目の前に着地し現れたレイフォン。
「レ、レイ!?」
「そうです私がレイフォンです。んで、何が俺のせいだって?」
「急、急に現れないでよバカ! 殺すわよ!」
突然レイフォンが現れた事に動揺しているアシュリー。
「相変わらず俺には口が悪いな」
「あ、当たり前でしょ!」
言い切るアシュリー。
「……それで? 帰るって行ってたけどこっちは屋敷に向かう道じゃないよな?」
「レイには関係ないでしょ!」
今は素直な言葉が言えないアシュリー。
「そうかもな……だけど心配してるんだよ」
(マリベルのやつが)
「え? レイが……私の事を?」
「あ、そうだ」
(誰がとは言わずに正解だったな)
モジモジしだすアシュリー。
「わ、私を心配して追いかけてきてくれたの?」
「あ、はい」
レイフォンは空気を読んだ。
「そ、そう……」
なんだか嬉しそうな表情に見えるアシュリー。
「その……あれだ。よくわからないけど俺が悪かった。だから店に戻ろうぜアシュ」
「ほ、本当に悪いって思ってる? 私の気持ちわかってる?」
「も、もちろんだろそんな事」
(え? 何の話なわけ?)
「そっか……なら……ならね? 証拠を見せてくれる?」
(証拠だと?)
アシュリーは恥ずかしそうに俯き気味にした顔を赤らめている。
レイフォンにはさっぱりである。
「わ、わかった」
(わからないけど)
アシュリーとの距離をつめるレイフォン。
そして
レイフォンはアシュリーの額に口づけをした。
「これじゃ、証拠にならないか?」
(頼む。当たってくれ)
「……」
黙りこむアシュリー。
(え? 違ったか)
「ねぇ……レイフォン?」
「は、はい?」
キョドるレイフォン。
「私ね。欲張りだから言葉でも証拠が欲しいの……ダメ?」
上目使いで見てくるアシュリー。
アシュリーはデレモードに入っていた。
ひとまずアシュリーが機嫌を悪くさせていない事に安堵するレイフォン。
「言葉?」
「ダメ?」
上目使いからの首を傾げるデレリー、アシュリーのコンボ。
(結局なんだったんだ? つか、可愛いなこんにゃろう)
デレるアシュリーが可愛いと思い、少しだけ頬が赤くなったレイフォン。
「えっと……俺は」
「俺は?」
「アシュの事を」
「私の事を?」
いちいち左右に首を傾げるアシュリー。
「だから……」
「だから?」
「だから……俺はアシュの事は好きだ」
「本当?」
「本当だ」
「うふふ」
可愛らしく笑うアシュリー。
「私も、私もレイの事が好きよ。だから私をあまり不安にさせないでね?」
「あ、ああ、わかった」
「ふふふ、じゃあ行きましょう?」
「ど、どこにだよ」
アシュリーに見とれてしまっていたレイフォン。
「ん? レストランに戻るんでしょ?」
「あ、ああ」
「なら、はい」
右手を差し出してきたアシュリー。
今のレイフォンは空気を読める男である。
レイフォンは差し出された手を優しく握った。
「み、店までだからな?」
「うん!」
とびきりの笑顔のアシュリー。
そして、ふたりは手を繋いだまま歩き出したのであった。
お読み頂きありがとうございました。
ブックマーク、レビュー、感想、評価ありがとうございます。
色々と言いたい事がある(誤字脱字が多い、文章能力低い等)作品だとは思いますが繰り返しお読み頂いた事には感謝します。
来年も何卒よろしくお願い致します。